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かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
矢が射抜く一輪の花
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弓道場の怪異⑤

「すみません。遅くなりました」


 樹里きさとは委員会の行われる多目的教室の扉を乱暴に開く。視線が一気に樹里のほうへと注がれた。


「大丈夫よ。まだ十分あるし、まだ来ていない人もいるから」


 しばしの沈黙ののち、実行委員長の園田先輩が答える。周囲からクスクスと笑い声が聞こえてくる。


(なによ。急がなくてもよかったじゃないの)


 先に来ていた弦音つるねを睨みつけた。


 弦音はとぼけたように天井を仰いでいる。


 その態度に内心苛立ちを覚えながらも、樹里は俯き加減で弦音の左隣に座った。


「大丈夫。僕たちもギリギリだったから」


 右隣に座っていた秋月がいう。


「ありがとう。いい人ね。秋月君」

「なんだよ。俺が悪者みたいじゃないか」


 少し照れている秋月とは反対に、弦音がむくれた。


「さて、時間ということで会議をはじめましょう。あっ、そうそう、先生は急用ができたということで遅れるそうです」


 文化祭実行委員長をつとめることになった先輩がいうと、一同がざわめいた。


「よかった。あの先生、面倒なのよねえ」

「そうそうなにかと口に出す」

「なんかさあ。いかにもオタクって感じの小太り眼鏡なのに、変に細かいのよねえ」


 そんな会話が行きかう。


「静粛に。とにかく、始めるわよ。秋月くん。書記お願いできるかしら」

「え?僕」

「いいでしょ。お願い」

「なんで二年生?」

「三年生が書記しないのかしら」

「あれでしょ。園田先輩も……」


 そんな言葉が聞こえてくる。

 彼らの言葉は当たっているだろう。

 そういうことだ。

 あの委員長も秋月狙いというところだろう。


「わかりました」


 秋月は立ち上がると、教壇のほうへと向かった。

 園田先輩に従って、チョークで議題について書き込みを始めた。


「今日の最初の議題は部活動の出し物についてです。先日、各部からの出し物についてのアンケートは出してもらいましたが、いくつかダブっているものがあるようです」


園田先輩が各部の出し物を読み上げ、それを秋月 が黒板に書いていく。

そして、樹里の所属するバスケ部と弦音が所属する弓道部が書かれた。


「肝試しってなによ」

「お化け屋敷って定番じゃねえ?」


 樹里と弦音の声が重なった。

 言葉の通り、バスケ部女子はお化け屋敷と書き、弓道部は肝試しと書いたのだ。


「文化祭の展示品に"肝試し″はないと思うわ」

「いいじゃん。お化け屋敷も肝試しと同じじゃないか」


 どうでもいい話だ。


「弓道部といえば……」


 園田先輩が口を開いた。


「なんか出たらしいわよ」

「出た?なにが?」

「決まっているじゃない。幽霊よ」



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