迫りくるモノ⑥
“呪い”
それは古来より伝わる禁術。
一度人を呪えば、必ず自らに跳ね返ってくる。
人を呪い幸せを奪うものに罰が与えられる。
「そんな言い伝えがあるの?」
彼が尋ねた。
「さあ、どうだろうね。あいにく僕は“呪い”をかけたことはないよ。でも、方法は知っている。確実に人を呪う方法をね」
「使ったことがないのに知っているの?やろうと思えばできるんだね」
「うん。できるよ。でも、しない。跳ね返ってきて不幸になるつもりはないからね。呪って幸せになれるなんて思えないしね」
「でも知っているんでしょ。どうして?」
「どうしてかな。勝手に父が教えたからね」
「ふーん。とうさんのお父さんってどんな人だった?」
「放浪癖のある人だった」
「なーんだ。とうさんと同じじゃん。血は争えないね」
「はははは」
ナツキの一言に桃史郎は苦笑いを浮かべた。
「けど、最近は“呪う”人が多いからね。それもモノノケなんか使うから鬼が増える」
「だれかが回収しているんでしょ。とうさんと同じように……」
「僕は阻止したいだけだよ。彼らは鬼をたくさん手に入れたいらしい」
“鬼”は自然発生することが珍しい。
時に生まれながらの“鬼”もいるのだが、ほとんどの“鬼”は肉体と異なる魂が入ったことで生じるモノや人の恨みによって生まれる“呪い”に利用とされた物や動物、只人が見ることができないモノノケが暴走状態になる“アヤカシ”を超えたさきに進化するモノとして“鬼”の存在になるという。アヤカシのうちはまだ戻れる。しかし、鬼となれば決して元へは戻ることができない。
鬼は鬼だ。
装うことはできるが、決して戻ることはない。
桃史郎はナツキを見た。
「ナツキ……。ちょっといってくれるかなあ」
「いいよ。どっちにいけばいい?」
「わかっているだろう」
「そうだね。僕が必要なのは彼だもんね。じゃあ、行ってきまーす」
ナツキは桃史郎に大きく手を振るとその場を駆け出した。




