店長と刑事①
刑事さんが立ち去ったあと、店員さんのほうから中に入ってくださいと声をかけてきた。
先ほどいた店員さんの弟らしい少年はもういない。
紙袋を持って、どこかへといってしまった。
「あの……」
店に入ると洋子はようやく口を開いた。
店員さんは背を向けたままだ。
いったいどうしたというのだろうか
「あなた、亜衣ちゃんの妹さんだったのね」
「はい。あの……姉のことを知っているんですか?」
洋子が尋ねると、ようやく振り返った。
彼女の表情は暗い。どこか思いつめた様子だったために洋子は言葉を失う。
同時にある期待がよぎる。
「知っているもなにも。彼女は半年前までここで働いていたのよ」
洋子は目を大きく見開いた。
働いていた?
この店で?
「知らなかったの?」
洋子は首を縦に振る。
聞いていない。
アルバイトをしていたことは知っていたが、この店で働いていたことなんて全く知らない。
何度か店に立ち寄っていたけれど、店員としての姉にあったこともなかったし、店に姉と訪れたときもそんな素振りをみせなかった。
「でもね。急にやめたのよ」
「やめた?」
「ええ。なんか、店長とトラブルになっていたみたいなの」
やめた?
やめさせられた?
洋子の中で様々な憶測が飛ぶ。
「やめさせられたわけじゃないのよ。彼女が自主的にやめたのよ。店長はやめたことに相当ショックをうけていたみたいだけど……」
「あの……。刑事さんがきたのは……」
「実はね。彼女を最期に見たのは私みたいなのよ」
「え?」
「あの日、あなたが訪れたあとに彼女もきたの。なんかねえ。キーホルダー買っていったのよ。熊の……」
「キーホルダー?」
「ええ。なんかすごく思いつめた顔で買うものだから、尋ねてみたの。そしたら、妹に謝りたいからって……」
洋子ははっとする。
謝りたい。
私に?
「でも、そのキーホルダー遺品の中にはなかった」
洋子がつぶやく。
なかった。
姉の遺品には、自分へのプレゼント用とされる袋もなかった。
それどころか姉がいつも鞄にぶら下げていた手のひらのぬいぐるみもなくなっていた。
あったのは、姉の遺体だけ。
所持品一切もっていなかったのだ。
三か月たったいまでも戻ってきたものはない。
「あの……。どうしていまさら……」
「そうね。私もそう思ったのよ。どうして今更この店にきたのかって……。そしたら……」
そこまで言いかけたときに店の扉が開いた。
「ここよ。ここ」
すると、女の子が二人、店へ入ってきた。
高校生だろうか。
ショートカットの少女とポニーテールをした少女だった。
「本当にかわいいものがいっぱいあるわ。すごーい」
ポニーテールの少女がはしゃぃでいる。
「ごめんね」
店員さんが洋子にそう謝るとお客さんのほうへと近寄っていった。
洋子は店員さんにもう帰りますと一礼すると、店の扉を開いた。




