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かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
奪われた瞳と放たれた銃弾
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かぐら骨董店⑨

なんとなく理解できたというのは本当だ。

 高柳成都という関西訛りの男の無駄に長すぎる話と朝矢の端的すぎる話、そして先日自分の身に起こった出来事を総合するとなんとなくわかる。

 この世界には常識では考えられないことが多く起こっている。

 地震や台風、火事、事故といったもの。

 感染症やそのほかの病気

 そんな類のモノはなんとなく解明されている出来事。

 けれど、先日弦音が目撃したものはそれとはまったく異なるものだった。人が化け物に変貌したのだ。しかも身近にいた女の子が得体のしれないものへと変貌をとげて襲うという事態に弦音はついていけなかった。  

 それだけではない。

 朝矢という男が見たことのない大きな犬。

 いや犬というよりも狼だ。

 それに乗って、悠々と化け物の上を駆け上がっていった。そのまま、あの化け物に飲み込まれたかと思うと、化け物が消えるとともに姿を現した。

 それから、歌が流れてきた。

 その直後、あんなに騒動となっていた渋谷が何事もなかったように人が通っていく。

 いや何事もなかったのだ。

 弦音以外のものからしたら、何事もなくいつもの日常がすぎていっているにすぎなかった。

 どうして、こんなことが起こったのか。あれは夢ではないのかと思った。

 しかし、夢にしては長い。

 あれ以来、自分は変なものが見えるようになっている。しかも、毎日のように時間も場所も関係なく、忽然と彼らが自分の視界に入ってくるのだ。

 いまも見えている。この骨董店のいたるところに得体のしれない生き物たちがうごめいていた。

 そちらに気を取られていたこともある。

 シゲと呼ばれた男の話が入ってこなかったにのは……。

 彼らは見えているのだろうか。

 たくさんのうごめくものたちのこと。

「気にするな。こいつらはただいるだけだ」

 それに気づいたのだろう。朝矢がいった。

 確かになにもしない。

 もう三十分以上もここにいるというのに、彼らが弦音たちになにか悪さするふうでもない。

自由に過ごしているようだ。


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