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かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
矢が射抜く一輪の花
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弓道場の怪異①

 首都東京はいわずとしれた日本の中心だ。全国各地からさまざまな人々が集まってくる。都心にはビルが立ち並び、道には人が溢れ帰っている。人のざわめきと街頭に流れる音楽たち。聞くものによっては雑音にも聞こえる喧騒。


しかし、ひと度都心から離れれば、それなりに静けさを除かせている。発展し続ける文化とは異なり、昔ながらの町並みや田園といった風景が広がっている。


ここは東京なのか。


どこか地方の懐かしさを漂わせる場所があると、上京したものにとっては一種のオアシスのように感じられる。


それでも、ここが生まれ育った九州の田舎ではない。当たり前のように見えていた山がビルの向こうに隠れてしまって見えないのだ。


ずいぶんと遠くへ来てしまった。



 有川朝矢ありかわともやは、バスの後部座席の窓から見える光景をぼんやりと眺めていた。


 バスの車窓から見える住宅街。


  日本の首都でありながら、どこにでもある日本の風景。


それでも、ここは知らない町だ。


 バスは何度も止まり、何度も動く。そのたびに顔ぶれが少しずつ変わっていく。


 どの顔ぶれもとくに違和感もなく、当たり前のようにお金を入れてバスに乗る。


新宿のバス停から乗ったときには、満員だった客は都心から離れるほどに減っていく。それでも、一人しかいない状態にはならなかった。


 田舎とはずいぶんと違う。彼の故郷ならば、一時間に一本しかないバス。


 乗っている人数も毎回一人か二人。


 通勤通学時間でも多くて十人いるかいないかぐらいだ。


 それに比べて三分から十五分に一本はくるバスの中が満員となるぐらいに人があふれているという状況は地方の田舎から来た者からしたら、不思議でならない。


 それも都会でも生活が続くと驚くこともなく日常となる。

 

 いくつもの景色が通り過ぎていく。


 町の通りにもぽつりぽつりと人の歩く姿。


 サラリーマンもいれば、制服を着た学生の姿もある。


 目的地に着くまでに制服姿の人たちが増えてくる。


 朝矢の視線は斜め前に注がれる。


 バス停の前。


 学生の姿が見えてくる。


 バス停の向こう側の坂道。そのうえに白い建物が見えてくる。


「山有高校前。山有高校前」


 アナウンスが流れ、バスが止まった。


 朝矢は座席から立ち上がり下車しようと前方のほうへと向かおうとする。しかし、前方ではなく、後方の扉が開いたことに気づいた。


 そうだった。


 もうすでにお金は払っていた。


 朝矢は慌てて、後方の扉へと引き返す。


 そこを慌てて降りる姿はおそらく周囲から見たら滑稽なものではないだろうか。


 いくつもの視線を無視してバスを降りる。


 東京に来てから一年以上になる。


 普段は電車を利用するため、バスの乗り方がいまいちわからない。


 どうして、前払いなんだろうと心の中で何度も愚痴ってしまうほどだ。


 朝矢が下りると同時に前方から制服をきた学生たちが乗り込んでいく姿を横目にバス停のすぐ前にある坂道を見上げた。


 そんなに長い坂ではない。そのため。校門がはっきりと見えている。


 朝矢は坂を登り始めた。その間にすれ違うのは学生たち。


 見慣れない私服の青年に振り返るものもいるが、だれも話しかけたりはしない。


 校門の前で立ち止まった。


「ここだな。依頼人がいるのは……」


 朝矢は校舎のほうを見上げた。


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