表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
矢が射抜く一輪の花
PR
23/341

嫉妬と執着と癒えぬ痛み⑤

 芦屋は店を出るとすぐに病院へと向かった。病院の前には何台かの警察車両が止まっている。


 芦屋は車をその隣に停め、病院へと急いだ。


「芦屋刑事」


 彼女のいるはずの病室の騒然となっていた。


 病室の前には野次馬たちが人だかりがでにきており、警察に支えられるように彼女の母親が出てきた。


「窓ガラスを割って、出ていったようです」


 部下からそう説明されながら病室に入り、割れた窓ガラスの外を見る。


 この病室は三階。


 窓の外から下を覗くとそこはアスファルトの駐車場になっており、窓から飛び降りるとなると、女子高生の体格だと無傷ではすまないはずだ。


 それに彼女はごく普通の女子高生でアスリートではない。


 それなのに三階の窓から飛び降りると即座に行方をくらましている。


 普通に考えたら、アスファルトの上でうずくまっていても不思議ではない。それにも関わらず、飛び降りた直後猛スピードでかけていったということになる。

 果たして普通の高校生がそんなことができるのだろうか。

 

「芦屋刑事。どういうことでしょうか」


 部下の一人が尋ねた。


「そんなもの。すでに察しているだろう。そうでないと俺たちは駆り出されない。上がそう判断したからな。それに……。異常事態は起こってる」


 芦屋はもう一度ガラスのほうを見た。


 不自然に割れたガラス。人の手で割られたにしては粉々に砕けている。別の力が働いたとしか思えない。


「柿原。観察してみてくれないか」

「はい」


 柿原と呼ばれた部下は窓ガラスのほうへと近づくなり、アスファルトのほうを凝視する。


その間に芦屋は窓ガラスを愕然と見つめている少年のほうを振り返る。


「さてと、君はこの事態に心当たりがあるようだな。話を聞かせてもらおうか」


 少年は顔をあげて芦屋を見た。



**********************************



 弦音は走っていた。


 どこへむかえばいいのかわからない。


 いったいどこへ彼女は行ってしまったのだろうか。


 弦音は樹里がいなくなったことを知ってすぐに病院を飛び出したのだ。それから彼女が行きそうな場所を走っていく。さほど時間が経っていないはずなのに彼女の姿はどこにもない。


「杉原くん。まってよ」


 気づけば、後ろから麻美がついてきていた。


 弦音は立ち止まり振り返る。


「西岡……」


 必死に追いかけてきた様子で麻美の息が上がっいる。


「一人で突っ走るのはやめてよ。心配なのは私も同じよ。もう、どれだけゾッコンなのよ」

「え? えっと、そっそんなんじゃない」

「わかりやすっ……なのにあの子は鈍い。かわいそうなこと」

「なっなんだよ。なにが言いたいんだよ」

「それは置いといて、闇雲に探しても見つからないわよ。たぶん……」

「だったら、どうしたら……」

「さっきもいったじゃないの。樹里の言葉」


 そう言われてはっとする。


「もしかして、西松羅中学?」

「うん。そうかもしれない。そうじゃないかもしれない」

「それじゃ、そこへ」

「待って」


 麻美が弦音の腕を掴む。


「なんだよ。さっきから……」

「一回病院に戻ろう。もしかしたら……」

「そんなことやってられるかよ。江川がおかしいんだよ。どうにかしないと」


 弦音は麻美を振りほどき、全速力で駆け出した。


「ちょっ……」


 麻美が呼び止めるが彼の足は止まらない。


「早い。本当は弓道部じゃないわよね。杉原って……。もう仕方ないわ」


 麻美は病院のほうへと駆け戻った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ