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マジック~大太刀振るいの祓い屋~①

主人公は一切出てきませんが、前話の「喫茶マジック」に登場したマスターとウェイトレスの話です。

この世に起こるあらゆる怪異事件を調査する組織が存在している。


その名は「幽霊調査隊」


なんてふざけた名前だろうかと思ったのだが、メンバーたちは本気だ。本当に幽霊の存在を認知することのできる輩の集まりであらゆる情報と依頼を受けて調査をしている。


その「幽霊調査隊」に期待のルーキーがいる。


それはいまサリノの前を鼻唄を奏でながら歩くマジックという男だ。


年は21歳で、ウルフカットされた髪の裾を金色に部分染めしているのが特徴の小柄な男。


両耳にはピアス。


服装もいまどきの若者といったスタイルで鼻唄でつけているヘッドホンから流れる最近流行りの曲を奏でていた。


マジックとは外国人の名前のように思えるがごく普通の純日本人で、“真実空”と書いて“マジック”と読む。その当て字もいまどきのキラキラネームだ。


そんな今風のどこにでもいそうな若者が数ヶ月前に「幽霊調査隊」に入社したばかりの新人でありながら、期待のルーキーとされてきる。それはかの有名な陰陽師の一族の出身まいうことが大きいだろう。


サリノはそんな彼と相棒を組まされることになった「幽霊調査隊」の新入りだ。その男とは同期ということになる。


年も彼とさほど変わらないのだが、その霊力の数値ははるかに劣っている。


なによりもサリノは陰陽師とはまったく関係ない血筋だ。いやいやそもそも日本人でもない。


イギリスからやってきた留学生でそこそこ霊力があるぐらいのものだった。それがなぜ日本へやってきたかというと、単純にいえば、日本に興味があったというだけの話。


日本の知り合いを辿って、「幽霊調査隊」というものに所属することになった。


そしてそのまま、同期の真実空という男の相棒になった。それから数ヶ月、期待のルーキーとよばれる意味を目の当たりにすることになる。


「ここだ。ここっすよお。サリノさん」


真実空はまるでラップでも奏でるような口調でしゃべりながら、今回の現場である廃校舎を見上げる。


「ココニ幽霊ガイルンデスネ?」


サリノは片言の日本語で尋ねた。


「イエース。カモーン」


すると、真実空はまったく発音のなっていない英語で返してきた。


「真実空サン。日本語デイイデスヨ」


「オーマイゴッド。アイムソーリー」


「ダカラ、ヤメテクダサイ」


「じゃあ、行こうぜー。ゴーゴー」


真実空は気合い入れるかのように拳を上下させながら、意気揚々と廃校舎へと入っていく。


サリノはそのあとを追った。




少子化によって、児童の数が現象している時代。各地で小中学校の合併が行われていた。


いま、サリノたちがいる廃校舎もまたその煽りをくらって、合併よる廃校となった小学校である。

廃校になり、子供たちの笑い声が消えたから数年。町は校舎の解体を決め、決行することになった。


すると、次々と不幸なことが起こる。


解体にあたった業者に降りかかる事故による死傷。


正体不明の病気の流行が解体業者たちや地方行政に関わる人たちに広がり、これもまた数人の死者がでた。そのなかでも、解体を率先した現役町長がかなり苦しんで亡くなっている。


そういうことが続き、廃校にある幽霊の仕業ではないかとささやかれるようになったのだ。


そこでサリノたちの所属する「幽霊調査隊」

に依頼がきたわけだ。もちろん、「幽霊調査隊」というのは表に出していない名前で表向きは町の探偵事務所になっている。


その依頼をうけ、駆り出されたのがサリノと真実空というわけである。


真実空は廃校舎の門をくぐり、玄関の前まで来ると依頼人から受け取った鍵を取り出すと、鍵穴にそれを差し込む。


ガチャ


鍵が開く音を確認すると、真実空は鍵をしまいながら、不満げに首を傾げている。


「ドウカシマシタカ?」


「うーん。あっけないなあと思ってさ。ここで一つ仕掛けとかあったらおもしろいのになあ」


「ナニヲ言ッテイルンデスカ。行キマスヨ」


サリノは玄関の扉を開ける。


真実空は納得いかない顔をしながらもサリノの後に続き、校舎へと入っていった。





















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