はじまり
花は咲く。
いつの時代でもどんなときでも咲き乱れる花は美しく、人々の心をなごませていく。
けれど、その咲き乱れた花は人々を恐怖へと導く岳のために存在している。
見覚えのある黄色い夏の花のはずだというのに、それは美しく咲かせて人間を楽しませているわけではなかった。
日本の首都東京の繁華街の中で、その黄色い花は立ち並ぶ高層ビルにの屋上まで到達しそうな勢いでものすごい成長を遂げ、人々を驚愕させている。
人々は戸惑い、逃げ惑う。
状況がわからずその場から動けぬもの。腰を抜かして座り込むもの。
悲鳴をあげるものいれば、声の出し方さえも忘れて愕然とするもの。
様々だった。
騒然となる人々の様子を楽しむかのようにその花は雄叫びをあげると同時に、まるで蛇のようにうねる緑色の蔓が逃げ惑う人々へと絡み付こうとしていた。
「くそったれ」
混乱の最中、一台のバイクが急ブレーキをかけながら止まる。
それにのっていた長身の青年が悪態をつきながら、突然現れた巨大な黄色い花をヘルメット越しに見上げている。
そこには怯えというものはない。ただ睥睨し、苛立ちだけを募らせている。
周囲には悲鳴が聞こえる。
どこからともなくサイレンの音。
やって来た警察たちが人々を誘導していく。そのひとりが青年に話しかけようとするも、別の警官が彼はいいのだと制止させた。彼を避難させようとした警官は首をかしげながらも、指示に従う。
「さっさと終わらせてやるよ。ボケ」
いつのまにか、青年の腕には弓矢が握られており、その矢先が巨大な花の方へと向けられいた。