03
「性格変わるってどういう意」
バンッ!!!
「みなさん遅いですよー!ワタシ待ちくたびれました!!」
『へ?』
……ええええーーー!!!??
今シリアスになるとこじゃなかった!?
え、ノックも無しに開けたよ!?
この部屋!
雇い主の娘!!
ていうか両手いっぱいにいろいろ持ってるけど、どうやってドア開けたん?
ポカーンと呆気にとられている俺たちに目もくれず、現れたのはこの屋敷の料理長。
いつまでも取りに来ない俺たちに痺れを切らしたのだろう。
ドカドカと部屋に入り、あっという間にテーブルの上にホールケーキとワッフルと紅茶のセットが並べられた。
あー、やっぱケーキ切ってねぇな。
だから料理長に切るよう言いに行こうとしたのに。
ちなみにホールケーキは俺の分である。
くっ……お嬢様のためとはいえ、4分の1も少なくなるなんてツラいぜ…!
「……なんで小柄な貴方の身体に、こんな大きいモノがまるっと入るのかしらね」
「美味いからだ」
「普通なら、いくら美味しくてもホールでは無理です」
「料理長、俺今度から珈琲がいいな」
「はいはい分かった分かった、今日は勘弁してそれ飲んでね。じゃあお嬢さま、また夕食時にお待ちしてますね!」
リークの言葉を軽くスルーして料理長に話しかける俺、を軽くいなす料理長。
なんか俺、子ども扱いされてない?
なんとなく複雑な気持ちになりながら、お嬢様に軽く挨拶をして去っていく料理長を見送る。
なんか……嵐のような人だったな。
まぁそれはおいといて。
夢のようなホールケーキに喜びつつも、フォークでざっくり4分の1を切り分けてお嬢様に渡す。
渋々とした表情でもキチンと受けとったお嬢様に、俺はついイイコイイコと頭を撫でた。
ビクッ!
瞬間、お嬢様の身体が驚く程はねた。
「なっ……急に何するのよ!?」
「そ、そんな驚くか? 怒んなよ、悪かったって」
「怒ってなんか……ああ、もうっ」
顔を赤くしながらプイと横を向いてしまったお嬢様に謝りながら、俺は残ったケーキを8分の1程度になるよう切り分けリークにも渡す。
それにお礼を言いつつ、一緒に食べ始めるリーク。
ところで良いのか?
リークもそうだけど、俺も侍女だろうに普通に座って食べてるんだけど。
使用人が一緒に、自分の部屋で。
おやつタイム。
お嬢様的にアリなん?
そう不思議に思ったが、お嬢様は何も言わない。
もしかしたら俺ことマナとリークとは、使用人を越えた仲なのかもしれないな。
もしそうだったら、口の悪いじゃじゃ馬娘だと思っててゴメンな!!
「ところでお嬢様、明日の件ですが」
「ああ、明日は8時頃出るわ。車を用意しておいてね」
「付き添いは」
「貴方も仕事があるんだし、マナを連れていくわ。この子どうせ仕事も忘れていそうだし」
「当たりだけど酷ぇ!!」
どうせ俺は何やりゃいいか知らねぇよーだ!!
ていうか、ソレ分かってんのによくクビにしないな。俺が雇い主だったら仕事もしない口悪いヤツなんざ即クビだぞ、クビ!
友達だろーが知るか。そこは社会人として、しっかり区別するもんだ。
……いや、もしかしてお嬢様は今、俺のこと記憶喪失中って思ってんのかな?
だから思い出すまで、今までの仕事をしなくてもいいように付き添いさせるって言ってたりとか。
……ん?
付き添い?
「明日どっか行くのか?」
「あら、言ってなかった? 明日はラルミネ学園の入園式があるのよ」
「入園式?…………明日?」
「そうよ」
サラリ。
あっさり言われたけど、いやいやいや?
え、何それ急すぎね!?
確かに入園式が近いとは言ってたけど、昨日の明日なの?
え、マジでこんな急に?
ズキンッ!
「っ、……?」
なんだクソッ、頭が痛……くない?
いきなり巡った頭痛は、まさしく一瞬の内に消えた。
どういうことだ?
気のせいかとも思いたかったが、痛みは確かに存在した。
それに。
――音が、する。
ピッ
ピッ
ピコッ
ピコン!
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