02
マクルス視点多めです。
「ごめんっっ!!!」
え、なにこの怪しい人物!?
帽子を深く被ったままツカツカとこっちに向かって歩いてきたかと思えば、カノンの前に来て腰を90度に曲げいきなり謝る男。
え、急じゃない?
怖くない?
ていうか誰!?
そんな混乱したマクルスの脳内など知りもしない、カノンはというと。
「――――顔を上げなさい」
「っ、カノ……」
パシンッ!!!!!!!
「うわ、やった!」
右手炸裂。
頬を叩かれた事で揺れる頭部。
その、帽子が。
とれた。
「え?ええ?えええぇぇええ!!!!??」
「うっさいわよマクルス」
「だっ、だだっだって、いやカノンさん君いま」
叩いたよね!?
この人――――王子を!!!!!
帽子がとれたことで現れたのは、まごうことなきディアス第一王子その人だった。
さすがに不敬罪だよ!?
そう思った瞬間、マクルスは自分もディアスを怪しい人呼ばわりしたことを思い出した。
いやでもアレは心の中だけだったから!
声に出してないから!
セーフだから!!
「良いんだ、ライズ伯爵子息。俺はフェリシア伯爵嬢にそうされてもおかしくない事をしたのだから」
「で、でも……」
「アンタの弟、どうなってんの!?アンタがしっかり見ててくれるんじゃなかったの!?」
ちょっ!
カノンさん口調!!
叩いた後で言うのもおかしい話だが、先ほどからのカノンの行動は見過ごせないレベルである。
それでも。
ディアスは何事でもないかのように再び謝っていた。
困惑するのはマクルスである。
そしてそれは、ディアスも同じだった。
「ところでフェリシア伯爵嬢、なぜライズ伯爵子息がここに?」
「物凄く嫌だけど、コイツが婚約者なの」
「さすがに酷くない!?」
「で、マナはコイツの執事と二人で出掛けてたときに拐われたのよ」
「成る程、そうだったのか」
「え、スルー?」
いくら何を言ってもまともな返事を得られなくてショックを受けているマクルス。
ちなみに当のパーシーは、ディアスが来た途端会話の聞こえない端の方へと非難……待機している。
肝心なときに使えねーな!
思わずそう毒吐きそうになったが、慌てて唾とともに飲み込んだ。
そんなマクルスとカノンと交互に見て、マクルスは一つ頷いた。
「ライズ伯爵子息を、アレに加えるんだね?」
「さすが、話が早いわね。そうよ、コイツの執事=コイツにも責任があるんだから、ちゃんと協力してもらわないと!」
「では、作戦会議としようか。カノン――――マクルス」
「…………ひぇっ!?」
なんで!?
何でいきなり名前呼び!?
ていうかひょっとしてカノンさんとは名前で呼びあってるの!!!??
「カノンさん、仮にもボクという婚約者がいるのに王子と良い仲なの!?」
「今そういう冗談ウソでも笑えないから止めて」
「すみません」
ガチトーンだった。
「誰にも聞かれたくない話だ、移動しよう。どこか良い場所はないかな?」
「そうね、ここはキリアス王子に見張られているかもしれないものね。場所は…………私には思い当たらないわ」
カノンの脳内に、例の地下室が思い浮かぶ。
ついでに沢山の秘蔵の本も。
うん。
なかったことにしよう。
「そうか。マクルスは知っているかい?」
「ボクは……」
――知らない、といえば嘘になる。
けれど。
ボクの、唯一の隠れ家だ。
言いたくない。
知らない、で通せる。
けれど。
「ボクは――――知っています。狭くて少しジメジメしていますが、王子は大丈夫でしょうか?」
「問題ない。それと、俺の事はカノンと同じく周りに人が居ないときは呼び捨てで良いよ」
「!あ、ありがとうござ……いや、ありがとう!」
「じゃあさっさと行くわよ!ほらマクルス、早く案内しなさいよね!」
二人がボクを頼りにくれるなら。
ボクは。




