06
「何で口調くらいで伯爵家から追い出される~なんて話になっちゃうん?」
「それはあたしの口からは言えないわよ~」
「ここまで言っといて!?」
「まっ、詳しくは坊っちゃまに聞いてね!運が良ければ隠れ家で……っとと、何でもない。それより何頼む?」
「あー、じゃあコーヒーで」
「おけー!」
注文を確認し店員にオーダーする。
そんなパーシーを横目に、俺は内心酷く驚いていた。
隠れ家?
何のことだ?
ゲームじゃ隠れ家なんてなかったぞ?
……そういや、婚約者が口悪いってこと自体ゲームにゃなかったな。
これ、過去の話だからって納得していいヤツなのか?
例え過去だとしても、二年やそこらで人間性が変わるわけがない。
普通に生活しているならまだしも、ここはゲームの中だ。
例え拗れた攻略者が偶然良い人間に出会えたとしても、それは確実にイベントなり単純な会話なり、ゲーム上で知ることにならなければおかしい。
多かれ少なかれ、攻略者を変えるのだから。
思い出として、心に残っているべきだから。
だから、ふと。
俺の知るゲーム上の歴史ではないんじゃないか。
……なんて考えが頭を過り。
慌てて片隅に追いやった。
「今考えることじゃないしな」
「え、今何考えてたの?」
「あー…お金の心配とか?」
「お金って今日の分?それならダイジョーブだよ坊っちゃまからぶんどっ……おこづかいもらったから!」
「はい不謹慎!」
「あははっ、それよりお互いの主人の話しよーよ!」
「え、それ口実じゃなかったん!?」
「モチッ!」
マジか。
俺ぁてっきり、マクルスの外での口調を知ってる人物だからってことで呼び出しくらっただけかと思ってたんだが。
「まず坊っちゃまなんだけど、あの人バカなんですよ!中と外で人格使い分け出来てるから頭のできは悪くないはずなのに鈍感だし、好き嫌い多いし、バカだし!」
「ちょい待ち!今主人の悪口タイムなん!?」
「褒めてるよ~?だって、バカな子ほど可愛いじゃない!」
「俺にゃー分からん感覚だわ」
ダメな子が主人って、マジで嫌じゃね?
つーか、ダメにも種類があるだろうが執事とか下の者にダメって言われる主人ってどうなん?
その家潰れね?
だからマクルスのヤツ婿養子なんかな。
いや、そんなことで長男婿養子にする意味が分からんわ。
――そう。
マクルスは長男だ。
俺が主人公のときはマクルスは女だったから、弟長男に家を継がせる呈で追い出される形で婚約者になっていた。
けれど、俺の予想が間違ってなければマクルスは長男のはずだ。
口調云々もそうだが、追い出されるっていう認識がある方がおかしい。
やはり。
この世界は。
バン!
「いらっしゃ……きゃ!?」
「おいテメェラ手ぇ上げろ!」
ん?
何か騒がしいな。
どした?
テーブルに手を付き身を乗り出して出入口を見る。
ゲ。
ナイフ持ってら。
「パーシーも手ぇ上げとけ」
「なになに、何事!?」
「強盗だ」
「ええっ!!?」
テーブルの下に避難しても意味ねぇかな?
避難訓練じゃあるめぇし……んや、これ天災じゃねぇけど人災だったわ。
つーか、さ。
助けてー、とか。
ごめんなさいごめんなさい、とか。
何でもしますから殺さないで、とか。
みんな凄まじい騒ぎっぷりだな。
パーシーも恐怖で顔が青ざめている。
いや、俺だって驚いてるけどさ。
周りが動揺しすぎてっから、ねぇ?
手を上げながらも気づかれないよう見ていると、分かったことがいくつかある。
まず見た感じ、この強盗は初犯だな。
帽子はしているものの、サングラスなどをせず顔がよく見える。
後ろ立てがあるようにも見えない。
身なりが悪く、切羽詰まった末の犯行だろう。
ナイフを両手でしっかり持つようにしているのは、自身がガタガタと震えているからか?
なんでヤる側が怖がってんだよ。
ああ、そうか。
ここは平和な国、って話だったな。
モデルナアームが長くてツラい( ;∀;)




