05
行きたくねぇぇぇぇぇ……!!!
喉元まで出かかった声を朝食と一緒に何とか飲み込んで、出かける支度をする。
といっても、支度なんて簡単なものだ。
日本にいた時と違い、スマホはない。
鍵も持ち歩く必要はない。
必要なのは、大金だけだ。
……いや、大金の準備が大変だろ!!!
何で大金なんだよ!?
物価おかしいんじゃねぇの!!?
とメチャメチャ訴えたい気持ちはあるが、ここは王城やその周辺。
庶民が気安く買い物出来るような所じゃないのは、まぁしゃーねぇか。
――とにかく。
お偉いさんに会うわけでもない俺は、比較的ラフな格好で現地に到達した。
さて、パーシーはもう居るの……あ。
「ここっ、ここですマナ様ココここ!!!」
「うるさい!鶏かオノレは!」
「すすすすみません!まさか本当に来て下さるとは思わず私感激しておりまして!!ああああ、マナ様は聞いていた通りの心優しき女神でいらっしゃるぅぅぅ!!!」
え、プッチして良かったん!?
初っぱなからこんなテンションのヤツ、相手にするって思うだけで憂鬱なんだけど!!
マクルスもウザかったけど、パーシーは比じゃねぇな。
あれか、マクルスの素を隠す口調はコイツ見習ったんかな。
そうだとしたら一言だけ言ってやろう。
おいマクルス。
見習う相手、絶対間違ってるぞ。
その証拠に、ほれみろ。
周りの目が俺らに集中してんじゃん。
うん。
これは居たたまれない。
逃げるが勝ちだ!!
「こっち来い!」
「わわわいきなり手を繋ぐんですか!?いくら友情で結ばれたとはいえ女性からなんてハレン………ぶっ」
「はよせぇ」
「は、はい……失礼します」
急ぎ足でこの場を通り抜け、近くにあった庶民的なお値段と噂のカフェに駆け込む。
バンッつぅ小気味良い音がしたけど。
パーシーがドアで鼻をぶつけたらしいけど。
俺のせいじゃ……あるけど知らん!
「いらっしゃいませ!二名様ですね、ご案内します」
「ありがとうございます」
ん?
店員さん、パーシーがドアにぶち当たってたの見てたよな?
まさかのスルー案件か。
流石に可哀想な気もしてきたぞ……少しだけな!
「で、何を話したいって?」
「そそそそんな、いい、いきなり本題ですか!?」
「あーもう、俺以外誰もいねぇんだから、ソレやめろや」
「……それ、とは?」
「緊張してる振りか知らんが、いい加減鬱陶しーわ。つーか、自分でもそう思ってんだろ」
「………………あれぇ?おっかしいな~?」
バレてないと思ったんだけどな~?
うん。
素のコイツもメンドくさそっ。
俺がさっきマクルスに見習う相手間違えてるって思ったのは、そもそもコイツが演技してるからだ。
ん?
何で演技だって分かったかって?
執事って立場のヤツがそんな緊張しぃなわけねぇし、吃りすぎがわざとらしすぎる。
つーのは建前で。
そんな特徴ある候補者が、実際のゲームで攻略対象者になってないことが不自然だからな。
何か理由があってキャラ作りしてるって考えた方が自然だろ。
この世界の人間は、何かしら抱えてるヤツが多い。
ま、そうじゃなきゃギャルゲーになんてならんか。
「で、パーシーはどんな闇を持ってんの?」
「えー、いきなりそれ聞いちゃいます?……なぁんてね。あたしに闇なんてないわ。あたしはね、闇持ちの坊っちゃまの隠れ蓑なのよ」
いやいやパーシーも充分闇持ちだろ!
なんだよ、あたしって!
あれか?
執事は心が乙女のヤツしかなれねぇの!?
「隠れ蓑って?」
「坊っちゃまの外での口調、聞いたんでしょ?アレが旦那様にバレたら、流石に伯爵家に置いてもらえなくなっちゃうからね。だからその口調を隠すために模索した結果、テンション高めな男の子が出来たってわけ」
「ちょい待ち!!」
意味わからん!
普通、少しばっか言葉遣い悪いからって追い出されなくね!?
つーか、それが本当だとしてさ。
それじゃなんだ?
あのウザい口調はマクルスがパーシーを真似したんじゃなくてマクルスとパーシーが一緒に作り出したってことか?
なんでそんなメンドくせーことしなきゃならんの??




