02
カノン視点で時々第三者視点です。
一緒にいるところを目撃されてしまったら、どんな噂を立てられるか分かったもんじゃない。
双方の思惑が重なり、まずはディアスが図書館を出ていった。
目安は5分、いや10分か。
バタンと閉められた扉を背に、カノンはハァと溜め息をついた。
マナが命を狙われたと言い出した、あのとき。
その通りだと思った。命とは言わずとも、狙われたのは確かにマナなのだと。
だからリークがソッチ系に話をもっていってくれて助かった。偶然とはいえその話にのることができ、そのおかげで私は、私を守るためだと言ってマナを一人きりにさせずに済んだのだから。
けれど本当は、半信半疑だった。
まさか本当に第二王子が絡んでいるとは思わなかった。
けれど。
ディアスの、あの反応は。
「……マナも、厄介な人物に目をつけられたものね」
「先ほどから言われているマナとは、マナ・ヒスタリアの事でしょうか?」
「っ!? だ、誰!?」
「失礼、おどろかせてしまいましたね」
カノンが声のした方を向くと、そこには眼鏡をかけた男の人が本を片手に優雅に立っていた。
――今、この男は何て言った?
存外おかしな言葉が聞こえ、カノンは首を傾げた。
私ですら、ここには初めて来たのに。
私ですら、初めて会う人物なのに。
なぜ学園に一度しか来てない人間の、マナの事を知っているの?
「あん……貴方は、いったい?」
「私はこの図書館の司書をしております。以後お見知りおきを、フェリシア様」
「まあ!貴方、私の事を知っているの?」
「この学園の生徒の顔と名前くらいなら、一致させております」
「それなら、なぜマナの事も知っているの?あの子はここの生徒ではありませんのよ」
その問いに、男はフムと一言呟き思案顔をした。
言うべきか言わざるべきか。
そう迷っている風だったのに、男はすぐに口を開いた。
「私は耳が良いので、お二人の会話を聞いてしまったのです」
「――っ!」
聞かれた。
あの話を、聞かれてしまった。
カノンは額に手を当て頭を下げ、心の中でディアスにゴメンと一言、謝罪した。
カノンは何も、ディアスと噂になりたくないが為だけに二人きりになれる場所を選んだわけではない。
ラルミネ王国は平和の国。
そう思っているのは他国は勿論、自国民であるカノン達も同様だった。カノンは最近のアレコレで色々疑っているが、他の人からはただの一度も、怪しむ声すら聞こえてこない。
だから。
信じているのだ、この国を。
だから、誰にも聞かれてはいけない話だったのだ。
こんな、後ろ暗い話など。
本来あってはいけないのだから。
「ああ、大丈夫ですよ。フェリシア様がおっしゃりたいことは理解しているので、お気になさらず」
「理解、している? 貴方は何を知っているの?」
「そうですね、フェリシア様の侍女をしているマナという女性と姉が知り合いだという事くらいでしょうか」
「まあ、そうでしたの。それで、理解とは……」
「フェリシア様。そろそろ次の講義が始まる頃では?」
「え?」
男の目線と声につられて時計を見ると、確かにもうじき休憩が終わる時間だった。
図書館と教室の距離は遠い。
慌てたカノンは、うまくはぐらかされたと考える間もなく、小走りで図書館を出ていったのだった。
教室に着いたのは、チャイムが鳴るギリギリだった。
席に着いた途端に鳴った音に安堵し、走ったため荒くなった呼吸を整えるカノン。
……の腕を、横から突っつく人がいた。
「カノンさん、どこ行ってたの?ギリギリだったし、心配したんだよ」
「別に、どこだっていいじゃない」
今アンタの相手してる余裕ないんだけど。
そう思ってさっさと会話を切ろうとしたけれど、そんな態度にも慣れたものなのだろう。カノンがデスクにうつ伏せているのも気にせず、ぐいぐいと話しかけてくる。
「そんな、つれないこと言わないでよ。ボク、カノンさんと一緒にランチしたかったんだよ」
「なんで?」
「なんでって……明日カノンさんの家に行くんだから、少しは話聞いたりしたいじゃない」
「あー……そう、だったわね……」
一難去らずまた一難、か。
何が悲しゅうて好きでもない、むしろ嫌いな部類に当たる人物を婚約者として迎え入れねばならんのか。
カノンは隣の席の男――マクルス・ライズに、深い深い溜め息をついてみせたのだった。
おかげさまで先日、投稿し始めてから一年が経ちました!
これも読者様がいてくれてるおかげです、ありがとうございます!!
しかし、話は未だマナが攻略対象者全員と会えてないという……笑
今回はカノンの方でも色々動きがあるのよ的な?
感想等ありましたら、随時募集中です!




