閑話・続く想いは
リーク視点です
――私には、好きな人がいる。
何故マナにその話をしてしまったのか。
リークは部屋に戻って一人になると冷静になり、後悔の念が押し寄せてきた。
マナは、優しい。
そして、強い。
身も、心も。
刺され倒れてからの5年間を抜かしてだが、前のマナと今のマナは本質的には変わっていない。
だから私もカノンちゃんも、今のマナをすんなり受け入れられた。そしてそれはきっと、本来のマナも。
だから。
「言うつもり、なかったのにな」
ポツリ。
出た声色は、自分でも驚くくらい悲し気だった。
けれど、仕方ないのかもしれない。
いくら好きであったとしても、リークの想い人にはこの気持ちは届かない。
リークの。
否。
守田李來の想い人は、この世界にいないのだから。
夢を見た。
ここは日本で、通っていた高校で。
数少ない友人と共に、周囲から浮いていた。
ああ、そうか。
これは夢じゃない。
遠い遠い、前世の記憶だ。
「李來ちゃん!今日新刊発売だよ!」
「うん、すっごく楽しみ!部活終わったら帰りに本屋寄ってこ!」
「行こ行こ!あ、私今日塗るんだった」
「あー、私もだ。ちょっと早めに切り上げて乾かす時間作ろっか」
「そだねー」
笑顔で会話する私たち。
その後ろで、ヒソヒソとギャルグループが話す姿が見える。
「ねー、美術部ってオタクの集まりなんでしょー?」
「聞いた聞いたー、ホモとか好きなんでしょキショーイ」
「マンガもそういうのいっぱい持ってそー!」
「「ヤダーwww」」
お前ら煩い!
そう言い返せないのは、ネクラで臆病で……そして、オタクでBLが好きなのは事実だから。
キュッと唇を噛んでやり過ごす。
「部活でも何描いてるかわかんないよねー」
「あー、自分でヘッタなマンガ描いちゃう系?」
「うわーキモー」
煩い!
声こそ出さなかったものの、思わずキッと睨んでいた。
美術部は、絵は真剣に取り組んでいるのに。
それすら馬鹿にされては、流石に腹が立つ。
けれど。
「なによ、その目」
「あ、その…」
「ちょっとーコイツ、マジイラつくんですけどー」
そう言ってギャルの一人が腕を振り上げてきた。
それを見た私は、反射的に目をギュッとつぶった。
叩かれる…っ!
…………?
衝撃が、来ない?
おそるおそる目を開けてみたら、誰かの背中が視界いっぱいに広がっていた。
まさか、守ってくれた…?
「な、何よアンタ!?」
「何って言われても。あ、そうだ篤人います?」
「はぁ?篤人なら今呼び出し食らってるわよ。アンタ、アイツの何なわけ?」
「マジかよ……俺、アイツの弟で真人って言います」
「えー、アイツに弟!?かぁいい顔してんじゃん!」
「いやいや、そんな。性格も似てないですし」
キーンコーン
「あ、じゃあ俺戻ります。すみませんがセンパイ方、兄貴に弁当渡しといてください」
「リョー」
チャイムの音で教室を出ていく彼。
私は無意識の内に、その後を追いかけていた。
けれど。
コミュ障の私はどうやって声を掛ければいいか迷ってしまい、なかなか話しかけられないままトボトボと後ろを着いていくだけだった。
「ったく、あんなのがいるなら言ってくれよな」
「え?」
「ん?げ、さっきの」
(げ、って言った)
じゃあやっぱり、今のあんなのって台詞は私に対しての物だったのか。
お礼を言おうとつい着いてきてしまったが、嫌な思いをさせてしまったかもしれない。
胸が嫌な音を立てる。
(あ、泣きそう)
思わず俯くと、上からため息をつかれた。
「先輩も大変ですね」
「……え?」
「俺コミュ障なんですよね。兄貴の性格上ああいう人の方が兄貴の場所知ってると思って話しかけたけど、俺あのタイプ苦手なんで兄貴にゃ出来れば教室にいて欲しかったです」
「そう、なの?」
「はい。ですから、出来ればあの人達の事あんなのって言ったこと内緒にしといてください」
「ぷっ」
なんだ。
あんなの、って言ったの、あのギャルグループにだったの。
……ふふ、なぁんだ。
「あ、そうだ先輩」
「うん?」
「俺、美術部すげぇって思ってます。自分の好きなことや感じたものを絵として表現出来るって、誰でも出来ることじゃないです。だから誰かに何を言われても気にしないでくださいね」
「……!」
「あと俺、先輩が例えどんな趣味だったとしても、自分らしくいられるのが一番だと思いますよ」
「えっ」
ソレってまさか、BLの話!?
どこから聞いてたの…!?
一人あわあわしていると、言いたいことを言い終えたのか、じゃっ!と軽く手を上げ去っていく……まなと、君。
その後ろ姿から、私はいつまでも目が背けられなかった。
――パチリ
辺りの明るさで目が覚めた。
そっか、私、あのまま寝ちゃったんだっけ。
「あの夢、久しぶりに見たな」
あの出来事から少しして、私は不慮の事故で死んでしまった。
そして神様と名乗るおじいちゃんに、この世界に転生させてもらった。
そこで初めて思ったことは、あの時のお礼言うの忘れた!……だった。
そして気づいた。
私は彼が、真人が好きになっていたのだと。
いやもう、我ながらアホすぎる。
いろんな意味で。
とにかく、ここは異世界なのだから私はもう好きな人と会うことは無いのだと理解している。
だから誰かに何を言ったところで、無駄でしかないのだ。
マナは優しいからなぁ。
それ知ったら私の分まで悲しんでくれそうだしなぁ。
……マナの悲しむ顔は、見たくないなぁ。
いや、見もしない事をとやかく考えていても仕方ない、か。
パンッ!
私はほっぺを軽く叩きつつ、良しっ!と気合いをいれた。
(まずは神様からもらった機械とやらを調べよーっと!)
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