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閑話・切り込み

ロキ視点です



あれから約一時間。


何だかんだで自分もしっかり完食し、店を出て少し歩いてから別れを告げた際。

マナに呼び止められた。



「この国は平和だからって、警戒心はちゃんと持てよな。ロキは騎士団長、立場があるんだからさ」

「当たり前だろう、怠ったつもりはない」

「そうか? ロキは平気でコーヒー飲んでたけど、俺が入れたのが砂糖じゃなかったらお前今この世にいなかったかもしれないんだぞ」

「それは……そうだな、肝に銘じておく」



俺の言葉に、マナはホッとしたように笑った。










じゃーなと言って颯爽と帰っていくマナの後ろ姿。

それを俺は見えなくなるまで目で追っていた。




やはり、聞いていた通りだ。

マナは変わったヤツだった。




警戒心がなかったわけじゃない。

自分が立場のある人間な事も理解している。


平和ボケしているつもりも、ない。



それでも偶然とはいえマナと出会い、秘密を知られてまで一緒に過ごす気になったのは。




ディアスが、親しくしていたからだ。




俺と違い、ディアスは王子という立場上周りには毎日多くの人が集まっている。


善悪や嘘にまみれた王国、それは平和を唄っているここラルミネ王国とて例外ではない。

だからこそディアスは、周りが自分に対してどういう思念を持っているかを感覚で知っていた。


本能といっていい。

人間の皮を被った私利私欲と毎日接しているのだ、それを知る術はとうに得ていた。




そんなディアスが、傍に置く人物。



マナ・ヒスタリア。



出会いは一ヶ月程前と言っていたが、ディアスの態度は俺に対する物と近く、まるで昔からの友人に向ける言動とよく似ていた。


もっとも、マナは女性である。


ディアスもそれを重々承知しており、少しばかり丁重に扱っているようだが。



今のディアスは、マナを信頼している。

正直なところ、それ以上のナニかがあるのかは俺自身に経験がないから分からない。



けれど。

ディアスが信頼している人物。



マナに興味を持つ理由など、それだけで充分だった。




そう、本来ならあり得ないハズだったのだ。

俺は、警戒よりも興味の方が勝っていた。











「………はぁ」



思わず溜め息が出ていた。

ただの興味本位なだけだったのに、どうしてこんな気持ちになってしまったのか。



右へ左へと。

店を知られないよう遠回りしながら、馬を停めてある大通りまで歩いていく。




……そうだ。

ここは、そうまでして知られたくなかった店のはず。




ハッと気づき、立ち止まる。




あの店に、マナが来た。



偶然?

――いや、まさか。



知っていたのだ。

王子の名前も知らなかったヤツが、ほとんどの国民に知られていないはずの、この店の存在を。




これが、俺がマナに対して初めて感じた不信感だった。




それでも。




「マナは、恩人だしな」

「恩人、ね。で、なんの恩人なんです?」

「っ誰だ!?」



意図せず呟いた声は、どうやら拾われてしまったらしい。



誰だ?

店を見られたか?




バッと振り向くと、思わぬ人が立っていた。




「……キリアス? なんでこんなところに……?」

「ふふ、驚いた?」



いつの間にか停馬所に着いていたらしい。

俺の馬の隣に馬を繋げ、にこやかな笑みを浮かべて話しかけてくる。



――キリアス。



その表情に、俺は思わず一歩後ろへと下がった。

昔から、そういう笑みを浮かべているときのコイツはタチが悪い。



「嫌だなぁ、逃げないでくださいよ。俺とロキの仲でしょう?」

「あ、ああ。そうだな。それで、なぜお前がここにいる? もしかして俺を探してたのか?」



キリアスは普段、外出することはあまりない。

城で勉学に励んでいて、買い物等も自分の執事やメイドに任せていた。


もっとも、必要になればそれなりに外に出はする。

今回も可能性の有りそうなことを言ったつもりだが、どうやら違ったらしい。



クスッ



キリアスの笑みが、濃くなった。



「いえ、偶然ですよ。こないだ知り合った妙な女の情報をもらったから来てみたんですが、まさかロキと会うとは思いませんでした」

「そうか。目当ての女性と会えなかったなら残念だったな」

「残念? いえ、そんなことありません。お陰で別の情報も集まりましたから」

「別の情報? なんだそれ、は……」




聞きながら思い出す。

ディアスが言っていた事を。



『キリアスがマナを良く思っていない、彼女の周り気を付けてくれ』



そう指示があったことを。




妙な女とは。

――マナのことか。




「キリアスは何故、彼女を毛嫌いするんだ?」

「どうでもいいでしょう、そんなこと。それよりロキがアッサリとそっち側になるとは思ってもいませんでしたよ。貴方は俺と同じだと思っていたから」

「なに?」

「なんでもありません。……さて、どうやらここは通らないようですね。俺がここにいる意味もなくなりましたし、失礼しますね」




ひらり。



言いたいことを言い終えたのか。

馬に跨がり去っていくキリアスを、俺は追いかけることが出来なかった。










マナは恩人だ。

今まで、家族でさえ否定してきて。

誰にも、ディアスやキリアスにさえ話せなかったことを。



簡単に受け入れてくれた。


俺は俺らしくと。

好きなようにしていいんだと言ってくれた、マナに。




根の生えた足が軽くなったのは、確かで。





けれど。




「俺が、キリアス側?」




つまり、マナを憎む側ってことか?

――想像出来ない。否、したくない。




なにを思って、どういう意図でキリアスがここに来てマナと会おうとしたのか。



ああ、本当に。

図りかねる。




とはいえ、マナもこの国に住んでいる一般国民だ。

第二王子という立場でおかしなことはしないだろう。




そんな、根拠として弱い理由で全てを片付けて。

俺も馬を手綱を持って、帰路に就く。










(だから、平和ボケと言われたのか)







キリアスは何の為に来たんでしょうね?


ひさびさの更新でスミマセン、よろしくです!


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