どさくさ紛れの甘いワナ
「そういえば性別反対って言ってたけど、マナの中身は男なの?女なの?」
「男」
「わっ、マジ!?」
「そーだよ、カノンにゃ黙っててくれよな」
「もちろん!……絶対言えないよ、こんなこと」
絶対言えない。
そう呟いたリークは、どこか寂しそうだった。
なんだ、カノンに内緒にしとくのシンドイとか?
でもなー…俺たちみたいな転生者同士ならともかく、カノンは普通にこの世界の生まれだろ?
言ったところで、まず信じねぇだろうよ。
「おおーっ!ついに見つけたぜ!!」
大通りから外れた、薄暗い細い道。
転生してからずっと、ラルミネ学園とココにだけは絶対来たかったんだよな俺!
まぁ学園には行けたけど。
不本意ながら気絶しちまったから、あんま行ったって感じじゃねーけど。
くそっ、早くトラウマ克服してやる!
待ってろよラルミネ学園″正門″!!!
とまぁ、それは置いといて。
俺が探してたのは、もう一つの行きたかった場所。
それは、ゲームで散々お世話になったカフェだった。
この外装
陽当たり具合
そして何より
活気のない空間!!
ふっ
何故それこそが何よりの証拠だって?
ここはな、甘い物好きだけどオープンに出来ない奴らが来るところなんだよ……!!
あー、ゲームでロキとよく来ちゃー俺(生身)も食いたいって思ってたんだよな~!
場所が分からなすぎて探しまくった苦労が、今やっと報われたわ……。
いかん、嬉し涙が。
……………………さて!
扉を開けよー…
カサッ
「ん?」
なんだ?
向こうで音したな。
あ。
そうだった。
そういえば、ここですらも安心出来ないヤツもいるんだっけ。
誰もいないときに、店の中にすら客が居ないか確認してから入るヤツ。
そう、例えば。
「ロキとか」
ガサガサッ!!
うわ、音うるせっ!
隣の草むらから豪快に動く……ん?
なんか人間ぽいな。
「そこでかくれんぼしてんのだーれだ?」
「……っ」
「おや」
思いの外素直に姿現したな。
あれかな、この店に来るヤツは皆同じ穴のムジナだからか?
……ん?
あれ、どっかで見た顔だぞ。
つーか背ぇでけぇな。
「誰だっけ……あ、思い出した!おまえロキ……じゃない、ディ、ルミネスの友達!」
「誰だディルミネス。というかおまえ、俺の事を忘れていたのか。……いや、それよりマナと言ったな、おまえとは一度話をしたかったんだ」
「じゃあ丁度良いしココ入るか!」
「わっ……おい!? ちょ、ちょっと待て!!」
あーあー
聞こえなーい!
せっかくカフェが目の前にあるんだ、入らないヤツがあるか!
俺は鼻歌でも歌いながらロキに似たヤツの腕を引っ張り、制止の声も聞かず店内に入っていった。
つーか大の男が本気で抵抗してたら入れないわけだし、入れた時点でコイツもココに入りたかったってことだよな!
カラン
カラン
「いらっしゃいませ……あら、ロキさん。お連れが居るなんて珍しいですね」
「いや、あの……ハァ、まぁいい。そうだな、いつもの席を使わせてもらおうか」
「畏まりました!」
あれ、名前知られてんの?
もしかして常連さん?
つーか今、ロキっつった?
「おまえ、マジでロキって名前なん?」
「話は後だ、入ってくれ」
「あ、うん。サンキュー」
そうして案内されたのは、なんと個室だった。
隠れ家の如く見つけにくい店の、更に個室って。
コイツ、どんだけ周りにバレたくないんだよ。
つーか、グラフィックで見た限り普通っぽかったけど、ロキと会ってたところも実は個室だったんかな?
カタン。
そんなことを思いながら席に着く。
対面に同じくロキ(多分)も座り、両肘をテーブルに起き……え?
ハァァアアアア……
「いや溜め息長過ぎだろ!!」
「煩い。君が忘れていたと知っていたら、俺だってわざわざ声を掛ける事はなかったんだ。誰にも、ディアスにも知られていなかったのに。くそっ、今までの苦労が水の泡だ」
「おぉう」
ストレス溜めてんなー。
しゃーねぇ、ここは俺がオゴッたるか!
俺は再び始まった長い長い溜め息をBGMに、メニューを広げたのだった。




