閑話・同盟
第三者視点?です。カノンかディアス視点でもあるか。
この国は平和だ。
数年に一度くらいの頻度で事件は起こるが、逆に言えばそれ以外は事件も何もない、平和な国である。
そして、それを良く知るのは他でもないディアスだ。
隣国など他国に行くと王族や城、重要な場所等への厳重な警護がされていて、それを王族含め人々は当たり前のように受け入れて過ごしている。
否。
実際にそれが、その国民の当たり前なのだ。
そう思うとラルミネ王国は何と平和な国か。
そこだけは唯一無二の存在、胸を張って誇れる事だとディアスは常々思っている。
「貴方が私に話があるなんて、珍しいじゃない」
マナと別れて数分。
考え事をしていた思考が、声をかけられた事で戻ってきた。
ディアスは一瞬驚いたものの、すぐに表面に笑顔を張り付けた。
「やぁカノンさん、きてくれたんだね」
「止めてよね。マナも居ないんだし、いつも通りで良いわよ」
「それもそうか。では、フェリシア伯爵嬢。君に話があるんだ」
伯爵嬢。
ディアスがそう呼ぶのは、なにもカノンだけではない。男女問わず、同年代には総じて家名で呼んだ。そしてそれは単に、防衛のためだった。
ディアスは本来、名前を呼ぶことはない。
弟であるキリアスと長年一緒に過ごしている騎士団長であるロキ以外、王子であるディアスは他に"特別″を作らないよう努めていたからだ。
因みにマナを名前で呼んだのは、ただ単にディアスのことを知らなかったからだ。
何故か王子と知らない彼女が、ナニカを企んでくるとは思えなかったから。
「知ってるわ。貴方が王子だってこと、マナにバレたんでしょ?」
「……話が早くて、何よりだ」
「あの子は侍女よ、貴方とは住む世界が違うの。本来なら会うことすら咎められるレベルでね」
「知ってるさ。だから君に会いに来たんじゃないか」
「はぁ?アンタ、マナと会いたいがために私を使う気?」
正気か、と思った。
カノンは非常に不快だという感情を、顔面一杯に溢れさせた。
マナが悪い訳ではない。
それでも使用人より下だと言われて笑顔でいられるほど、カノンのプライドは安く出来ていなかった。
そんなカノンの反応は、予想の範囲内だった。
「気にさわったなら謝るよ。ただ俺は、君と親しくなりたくてね」
「親しく……?」
「俺と、同盟を結ばないか」
「同盟ですって?」
驚き目を見開くカノン。
まるで突拍子もない話だ。
同盟なんて、互いに利益がなければ成立しない。
ディアス側はマナ関係だろう。
けれど。
今のカノンに、利があるかどうか。
「俺の事、立場が役に立つだろう?特にこの国では――偽の婚約者とか、ね。その代わり……」
「そう、残念ね。もう一週間くらい早く提案してくれてたら乗ったかもしれないけれど」
「なに?」
「婚約者なら決まったの。つい最近ね」
「それは…………失礼なことを言ったね。婚約おめでとう」
パンッ!!
「いたっ」
「え、やだ……申し訳ありません!」
無意識に、自分でも気づかぬ内に。
カノンはディアスの頬を叩いていた。
カノンは自分に驚き――恐怖した。
(不敬罪…!)
無礼な態度を許されたからといって、手を上げて良いわけでは無い。
言葉を正し、最大限の詫びをするため腰をおり。
膝を着こうとして。
止められた。
「気にしなくていい。何か理由がありそうだし、よかったら話してくれないか」
「はっ、はい……」
柔らかい声色で。
強制的な言葉。
「私は婚約なんて嫌。恋愛がしたい、好きな人と結婚したい。ただ、それだけ。本当に……それだけなのよ。そんな理由で叩いてしまって、ごめんなさい」
「……!」
恋愛が、したい?
そんなこと、言える人がいるとは思わなかった。
ラルミネ王国は平和な国。
それだけは誇れる。
けれど、それだけだ。
政略結婚が飛び交うこの国は、平和はあれど自由は無い。
年頃の男女は全員、政略結婚の対象で。
彼らは誰も不思議に思わず、受け入れる。
それが当たり前の、国。
だから。
「君は、凄いな」
「……え?」
「恋愛したい、ね。良いじゃないか、真っ当な理由だよ。とても、とても大切なことだ」
「本当?え、異端だとか非常識だとか言わないの?貴方王子よね?」
「王子だよ。だからこそこの国を知りたいし、この国をもっと良くしていきたいんだ。そしてそのために、君が必要なんだよ」
そう言葉を紡ぐディアスを、カノンはただただ見つめていた。
肯定されるとは思わなかった。
この国の代表とも言える人物に認めてもらえるなんて、一生来ないと思っていた。
これは、夢か。
「俺はマナやリークのような優秀な人材が仕えている、いやそれ以上に、自分の考えをしっかり持っているフェリシア伯爵嬢に興味がある」
「ディアス、王子」
「それに……俺は今、仲違いしている人がいる。そしてその人は、もしかしたらマナを憎んでしまったかもしれない。だから、頼む。マナを守ってくれないか」
「……それで、同盟」
「ああ」
見つめ合うのは、眼か、心か。
少しして、カノンの表情に笑みが浮かんだ。
「――いいわ、同盟を組みましょう」
「ありがとう。あぁ、そうだ。2人のときは俺の事をディアスと呼んでくれ。俺も、2人になったらカノンと呼ばせてもらおう」
「分かったわ。ディアス、これからよろしく」
共通の想いを胸に。
ひそかに。
2人だけの同盟が今、むすばれたのだった。
どんどん話が暗くなる気がする。
自分の悪いクセですな。
テンションおかしい明るい話が書きたーい!
ブクマや評価、本当にありがとうございます!
感想その他等々、なにかありましたらコメントくださいましまし!




