03
俺、日立 真人の好きなゲーム、ラルミネ王国物語。
その世界の主人公に転生した俺は、可愛い女の子たちに囲まれながらドキドキ学園生活をおくる
はずだったのに……!!
「カノンお嬢様」
「なによ」
「これ、必要か…?」
「当たり前でしょ!」
カノンお嬢様。
そう呼べって言われたから呼ぶけど、なんかしっくりこねぇな。
お嬢様っつーのはもっとこう…、こんなじゃじゃ馬じゃなければなぁ。
ともかくそのお嬢様がカバン(でかい)に入れたのは、ファンデーションやら口紅やら、とにかく化粧品だらけだった。
こいつ、学園に何しに行くんだ?
「お父様が言ってたの。この3年間で恋人が出来なければ、家が決めた婚約者と結婚するんですって!」
「ん?どっかで聞いた話だな」
「入園するのは貴族ばかりだもの、どこで聞いたっておかしな話じゃないわ。でも私は嫌よ、好きな人と結婚したいの!」
「!!」
学園では恋愛はしても結婚は親が決めた人とする。
それが、このゲームの暗黙のルールだった。
それでも、ただ一人。
そのルールに反することが出来る人物がいる。
彼が。いや、彼女こそが
――ラルミネ王国物語の、主人公――
「アンタ、俺だったのか!」
「意味分かんないから。私は私よ、カノンお嬢様とお呼びなさい」
オジョーサマに怪訝な顔されたけど、知るもんか。
やっと分かった。
理解出来た。
俺は主人公は自分の名前を入れる派だったから忘れてた。
フェリシア。
知った名前のわけだ。
この名前は、このゲームの主人公の――デフォルト名だった。
男じゃないから気づかなかった。
王女が王子だったんだ。
その王子たちと恋愛するのは?
令息ではない。
ならば、誰?
――令嬢、だ。
わき役?
まさか。
彼女こそが主人公だったんだ。
俺は?……彼女の、主人公の……侍女??
どういう立ち位置なのか分からないが、混乱している頭で必死に考える。
恋愛ゲームに転生したんだ、どうせなら恋愛を楽しみたい。
けれど、ダメだ。
今の俺は、見た目は女だけど心は男のままなんだ。
俺は、BLは嫌だ!!!
そもそもBLもGLも、俺じゃ地位がないから出来ないだろう。
ならば。
「なあ、もし……例えば俺のおかげで王子と結婚出来るように手助けしたら、実ったらどうする?」
「はぁ?アンタもそんなアホなこと言うのね。……そうね、もし出来たら一緒に城で暮らせるようにしてあげるわ。一生、楽させてあげようじゃない」
「よっしゃ!」
その話、のったぜ!!!
俺が出来る、残された道。
それは、主人公をゲーム通り恋愛成就させること。
見返りは、社会人だった頃には考えられなかった、約束された未来。
ずっと楽して暮らすために。
俺がこれからやることは。
カノンお嬢様を、きちんとした淑女にすること!!!!!!
……今のじゃじゃ馬じゃ、嫁にもらってくれねーだろうからな……
「………そんなの、出来るわけないじゃない…」
未来に希望を持ち気合を入れていた俺に、ボソリと呟いた彼女の言葉は届かなかった。
ここで序章が終了です。
ここまでは一気に書きたかった。
これからの更新はゆっくりで、金か日がメインで無い日もあります。
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