手のひらの白昼夢
「ん? なんだコレ?」
リークの泣き声という雄叫びをBGMに朝メシを食い終えお礼を言い、地下室から出たときのこと。
先に出ていったカノンに続いてリークの部屋を通りすぎようとしたら、テーブルの上に見慣れぬ何かがあるのを発見した。
長細い、四角い箱。
なんとなく見覚えがある気がして、手に取ってみた。
「あっ、それはダメ!」
パシッ!
いてっ!
手に当たった!
って奪うの早ぇな!?
くそぅ、じっくり見る前に取られたぜ……。
……じゃねぇ!
「悪い! つか人のモン勝手に触るなって話だよな。マジでゴメン、悪かったな」
「あ、や……コホンッ! 失礼、取り乱しました。これは私の手作りで不恰好なので、人様に見せる物ではないんです」
「へ? おまえが作ったん?……何を?」
「さて、ね。つまらないものですよ」
さぁ、話は終わりです。
そう言わんばかりに、その長い箱を懐にしまうリーク。
アレがなんなのか分からないままだけど、きっと大切な物なんだろう。
これ以上詮索するのは諦めるか。
若干の心残りはあるも、俺はおとなしく部屋を後にした。
翌日。
「えーっと、あと何買やぁいいんだ?」
目的地へと歩きながら、手元にあるメモを見る。
小麦粉×3袋
ジャガイモ×20個
カボチャ×6個
牛乳×4本
いやいや重いから!
徒歩で買い物する人の量じゃねぇから!!
くそっ、ピックめ覚えてろよ!
「……ん?」
あれ?
今、なんか。
知った顔があっちに行ったような?
思わず近くにあった壁に身を隠し、けれど好奇心に負け俺はソロソロと顔を覗かせてみる。
そこには。
正装し身なりを整え、凛と歩くリークの姿。
え、今日って急遽休み貰ってたよな?
正装するほど、そんな大層な用事なのか?
急に決まる大事な用事ってなんだ?
よし、つけよう!
あ、もちろんリークが心配だからだぞ!
好奇心だけじゃないんだからな!!
チラッ
チラッ
スタタタ……
ピタッ!
お、リーク立ち止まったぞ?
……って、おいおい。
ここ、お前入れないんじゃね?
リークが止まった先にある建物は。
――王族御用達の、レストランだった。
庶民平民より位が高い、貴族という存在。
その存在は、ここラルミネ王国とて例外ではない。
このレストランもそうだった。
金額とかじゃない、ただ単に庶民お断りを唱っているんだ。
俺は、ゲームでは貴族だった。
伯爵の跡取り息子。
その名は、その後ろ楯は強力だった。
貴族じゃ無い人が来たら追い返していたのを、俺は食事をしながら眺めていた。
「あの人、旅行客だろ? 入らせてやりゃいいのに」
「あら、優しいのね真人。貴族でそんな風に言う人、初めて見たわ」
「そりゃー、俺ぁ貴族である前にただの人間だからな。あの旅行客と同じさ」
「……ふぅん」
それがティアとこのレストランに来たときにした会話だ。
初めてシナリオを見たときは"何だこの女、失礼じゃね?"なんて思ったもんだ。
その時はまさか、旅に憧れていたティアから好感を持たれたキッカケだとは微塵も思わなかったわけで。
いやぁ、二周目やる時は「ふぅん」を深読みしたよね!!!
……って違う!
いかんいかん、トリップしとった。
今はリーク!
……リーク?
あれ、どこ行った??
慌てて探すも、見える範囲には見当たらない。
ひょっとして中に入った?
え、閉め出されね?
大丈夫なん???
チラッ
キョロキョロ
「うーん、それらしい人いっかなー?」
外から中を覗く。
うん、やっぱりいない。
どうせ今の俺じゃ中に入れないしな。
しゃーねぇ、帰るか。
「あれ? マナ?」
「……ん?」
誰?




