02
前半カノン視点です
「おや、もう一人いたんだね。キミはこの子の友達?」
「……そう、です」
マナがゆっくり歩いてきて、私と男の間に入る。私を守るように、手を広げながら。
私はそれを、ただじっと見ていた。
マナは、今。
そうだと言った?
友達。
その言葉は、否定され続けてきた言葉だった。
『私はカノンちゃんに拾われたから』
『友達なんて烏滸がましい…!』
『メイドとして傍にいられるだけで、充分幸せよ』
そんなマナが、私を友達だと言ってくれた。
欲しい言葉をくれた。
だから。
もっと、聞きたい。
「ダメよ、マナ。見ず知らずの人を、そんなに邪険にしては」
「カノンちゃん!?」
「この人とは話をしていただけよ。貴方が泊まる予定のホテル、名前は分かるかしら?」
「ありがとう、キミは優しいね。えぇと、ここなんだけど……」
そう言って男はポケットから何か紙切れを出した。
私はそれを受け取ろうとして、手を伸ばした。
グイッ
「きゃっ…!?」
「――だけどね、オトモダチの言うことは聞いた方がいいよ」
「カノンちゃん!!」
「ああ、うるせぇな」
「グッ…ゲホ!」
いきなり伸ばした腕を引かれ、私は男の方に倒れ込んだ。その男の、私を抱え引き寄せた手には。
隠し持っていたのだろう、ナイフを持っていた。
首もとにナイフが近づく。
驚きと恐怖で固まる私。
慌ててマナが傍に来ようとして。
そして、男が。マナを。
マナのお腹を、殴った。
「マナ! マナ!!」
「あーあー、おまえもうるせぇな。こいつみたいにおまえも殴ってやろうか?」
「ひっ…!」
「なぁに、ちょいと遊ばせてもらうだけさ」
ビリビリビリ
服が破かれていく。
なぜ?
なにを、されるの?
何も分からない。
――私が愚かだったということ以外、何も。
私はマナの本音が知りたかっただけなのに。
そのために男に近づいたのに。
男がなぜ豹変したのか。
男がどうしてこんなことをするのか。
男がどういう生き物なのか。
まるで分かってなかった。
私は、浅はかだった。
「おっ、いっちょまえに胸あんじゃん! ちったぁ楽しめそうだな」
「痛い! 離して!」
ギュッと胸を掴まれる。
嫌だ。
怖い。
たすけて、かみさま……!!
「カノンちゃん!!!」
「チッ、邪魔だ!」
只の威嚇のつもりだったのか。
男が振り回した、腕が。
駆けてきたマナの心臓に深く、刺さった。
「きゃぁあああ!!」
「げ、マジかよ」
倒れ込むマナを見て悲鳴を上げる私。
それに反して、男はどこか他人事だった。
「そんな……嫌ぁ!! かみさま、どこにいるの? たすけて、たすけてよぉ!!」
「神サマ? 居るぜ勿論。もっとも、俺の望みを叶えてくれる側だけどなぁ!」
「……なん、で?」
「言っただろ? 俺は遠いとこから来たって。神サマが俺をこの世界に連れてきたんだよ!」
「そっ…そんな……」
信じない。
もしこの男の言ってる事が本当だったとしたら。
私はもう、神なんて信じない。
「――その後の事は知らないわ。覚えてないんじゃないの。よく分からないのよ。気づいたら男が居なくなっていて、ナイフも無くなっていて。意識のないマナと血溜まりをボーっと見てたら、リークが来たの」
「いやいやいやいや、ちょっと待て!?」
ハード過ぎるんだが!!?
想像以上に物騒な話が出てきて驚いた。
ってか何だよその男!
男が皆そんな低俗な奴ばっかだと思われてたら泣くぞ俺!
「てかカノンは無事だったんか!?」
「貞操的な意味なら、無事よ。破れたはずの服も何故か元通りになっていたわ」
「そ、そうか…」
あー、それだけは良かったわ。
それにしても、神サマねぇ。
男がこの世界に来たって言ったってことは、アレか?
もしかして、そいつも転生してきたんか?
俺とは似て非なる転生だが……アイツらが関わってるなら、不可能じゃないな。
それに。
「カノンは、神を信じてないのか」
「神なんていないわ。いえ、居たとしても私にとっては悪でしかない。いない方がマシよ」
幼女もとい神様が前に言ってたな。
『カノンには声が届かない』
あれは、そういう意味だったのか。
神を否定している。
……まぁ当然だわな。
友達を殺され襲われそうになった相手に神が荷担してるとか、否定しかないわ。
これ、神さま信じるようになんのか……?
「あー、えぇと。アレだ。男が消えたなら、きっと神が何とかしてくれたんだよ。ほら、よくあるじゃん。光の鉄槌!みたいなさ」
「……そういえば、男が消えた後リークに"今の光は!?"って来たんだけど、私は光なんて見てないから分からなかったわ」
「ソレじゃね!?」
「まさか。もし本当に光が出てたのなら、リーク以外の大勢の人たちも公園に集まったと思うけど」
…………確かに。




