夢に向かって一歩から
ラルミネ学園正門に行くと気絶する。
それは俺にとって許しがたい事実だった。
学園こそが俺の青春!
人生のオアシス!!
学園内自体には入れるみたいだけどさ。
違うんだよな~~~。
正門は特に思い入れがあるんだよ、俺ぁ。
どのイベントも正門に行かなければ始まらないからな、正門っつーのはそれはもう大事な大事な場所なんだ。
けれど。
あの後。
案の定リークにしこたま怒られた俺は、ラルミネ王国立ち入り禁止を言い渡された。
それだけは嫌だ!
……って言ったらリークのヤツめ。
"気絶しなくなれば許可します"だと!?
おまえは俺の保護者か!!
まぁでも、残念ながら正論だしな。
くそぅ、こうなりゃ意地でも気絶しない方法探したるわっっ!!!
学園での一騒動から数日後。
休みの日を狙って、俺は外に出ていた。
今回は適当に出たわけじゃない。
ちゃんと目的地はあるんだけどさ。
……俺、辿り着けっかな…?
いや、別に迷う心配はしてねぇよ!
俺は方向音痴じゃねぇし!!
ただ、今までは選択肢で選べばパッと飛んだからな。
……あそこが近いか遠いかすら分かんねぇよ…。
それに、カノンの用事ならともかく俺の私用でグレイス使うわけにゃーいかねぇしな。
とりあえずゲームの背景思い出しながら、のんびり探すとするか。
「つっても、広い通りばっかだな」
改めて外に出て、俺はラルミネ王国がいかに発展してるか思い知った。
どこまでも続く高くきらびやかな建物。
人も車も、そしてなぜか馬もが安心して行き交うことが出来る道の作り。
浮浪者はもちろん、荒れた狭い道すら見当たらない。
俺ぁ狭い道沿いにある建物に用があるんだけどな!!
来る道間違った!!!
ドン!
「チッ、どこ見てんだよテメェ!」
「うわっ、と。悪いな、道探してたから前よく見てなかったよ」
「あん?」
うわガラ悪っ!!!
変なのに捕まっちまった!
え、てかコイツ何?
すっげーじろじろ見てくるんだけど!?
つーか、平和な王国にもヤンキーいるんだな。
怖かぁないが、くそメンドクさそう。
あ、やべ。
腕捕まれた。
「アンタ、どっかで見たことあるぜ」
「へ?」
「っかしいな、俺様が忘れるはずねぇんだが」
な、何事…?
俺はコイツのこたぁ全く知らねぇんだが???
「まぁいいや、嬢ちゃんこっち来いよ」
「わ、ちょ! 待てよ!」
グイ
丁度建物の影になっている道を進む。
暗い、少しだけ狭い道。
腕を握る力が、強い。
ちょ、なんか嫌な予感……
……ん?
「あーーー!!!!」
「うわっ、なんだよ!?」
思わずデカイ声が出たけど気にしない。
知らない人に、着いていかない。
そう決めたのが遠い昔のようだ。
俺は。
今。
その宣言を破棄する!!!
「ここ! 俺が来たかった場所だ! 案内してくれたんだなお前!」
「はぁ? 何言ってんだオメー、イカれてんのか? チッ、気が削がれたぜ」
「帰るのか? ありがとな!」
良い人に会えてよかったー!!
このままだったら着かなかったかも……っていうかめちゃくちゃ近い場所で迷ってたのな、俺。
まぁいい。
ガチャ
躊躇なく扉を開ける。
中は薄暗く、小汚ない。
まるで営業していないように見える。
うん、ゲーム通りだ。
上へと続く階段を昇る。
ギシッ
古い木の音が鳴った。
「おや、人が来るとは珍しい。いらっしゃい」
音に反応したのか、奥から女性の声がした。
……女性?
おかしいな、俺の記憶じゃ男だったんだけどな。
「こんにちは、ここは初見オッケーかな?」
「ええ、勿論です。何をお求めでしょう」
ズラリ
並ぶ雑貨類はどれも質が良い。
ここは優れた物ばかりだと有名だった。
ただし、それはゲーム後半の話である。
主人公があるキャラクターと深く関わる事でのみ訪れることが出来た、隠された場所だった。
その中で、求める物は。
「奥の、部屋を」
「……お客さん、本当に初めてかい? 良いよ、入んな」
――隠れた名店の、隠された部屋だった。
誰を出すか迷ってたら、日が経ちすぎました。




