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03


「アンタがあのルミネスだったとはね」

「へぇ、マナってば俺のこと話題にしてくれたんだ?」

「あら喜んじゃって、残念ね。マナは知り合いかどうかも不思議がってたわよ」

「おや、つれないね。俺とあんなに密な時間を過ごしたというのに」




え、笑顔なのに怖いぞ二人とも……?




よく分からんが、部屋に来ていきなり言い争いすんじゃねーよ。




ここ!

病室!!




「言い争うなら外でやれ外で!」

「そうよ、マナは今休んでいるの。知り合い程度が来ないでちょうだい」

「そうしたいのは山々なんだけどね、カノンさん。俺は教師に頼まれて君を呼びに来たんだよ」

「あら、私に用だったのね。わざわざ来てくれてありがとう、貴方ともあろうお方に先生が頼むとは到底思えないけれど」



ビクッ




……なんだ?




一瞬。

ルミネスが、言葉を詰まらせた。




貴方ともあろうお方?

伯爵令嬢であるカノンがそういうってことは、やっぱりルミネスはそれ以上の家の生まれってことなのか。



それにしちゃカノンもルミネスに対して口が悪い気がするが。




まさかラブか!?




願ったり叶ったりだが、ツンデレ口調は俺だけにしろ!!!




「……クラスメートが血相変えて出ていったんだ、心配でここに来るついでの頼まれごとくらい引き受けるさ」

「さすが慈悲深い一族ね。まだ数日しか会ってない――マナを、そこまで心配するなんて」




ピクッ




あ。

ルミネス、笑顔のまま表情固まっ…





こわっ!


顔めっちゃこわっ!!!





「ああ、もう。はやく行きなよキミ」

「――そうするわ、貴方を本気で怒らせたくはないもの。じゃあマナ、私行くけどすぐ帰ってくるから、ちゃんとベッドで待ってなさいね」

「ん、わかった」

「それと、ルミネスとやら。時間の問題だろうけど私は黙っていてあげるわ。ふふ、貴方に貸しが出来るなんてね」

「ご親切に、どーも」




黙ってる?

って、何を?






バタン!




カノンの後ろ姿を隠すように扉が閉まる。






瞬間。





"ゴメン"




そう呟く弱々しい声と共に、身体が抱きしめら……え?




「なっ、なんだ!?」

「よかった」

「ん?」

「よかった……生きてた」

「いや大袈裟だろ!!!」




別に今回はどこも刺されたりしてねーぞ?

ただ気ぃ失ってただけだぞ!?




なんで男なんぞに抱きしめられてんの今!!?




いやいやまてまて!

おまえ力つよ……ぐぇ。





「ちょ、ルミネ……ん?」




コイツ……震えてる?




なんでだよ。

なんでそんな弱ってんだよ?






これじゃ――突き放せねぇじゃん。






「おーよちよち大きな赤ちゃん、怖くないでちゅよー」

「それはやめて」

「え、ダメ? 似合わない?」

「いけない扉開きそう」

「ぶっ!」



ちょ、笑わせんなよな!



ってルミネスも実は笑ってんだろ!!

震えが変わったっつーか、力抜けてっぞ!!




俺はルミネスの背中をポンポンと軽く叩く。


それでも顔は上げない。




ああ、もう。

めんどくせぇな!




「はー…ルミネスおまえ、何かあっただろ」

「――どうして?」

「お前は強いからな」

「強い? 俺が?」

「最後に会った時、あのときの決意を帯びた眼は何物にも曲げられない力を放ってたからな。間違いなく強いと思う。ただ今は年齢的に未熟だし、未熟で良い時期なんだ。甘えても許される今、存分に甘えとけよ」

「甘えるって、誰に?」

「そこはまぁ……俺とか?」



俺でよけりゃいつでもなんでも聞いてやっから。

だから、辛気くせぇ面してんなよな。




イケメンが台無しだぞ!




「本当にキミって人は……」

「ん? なんだって?」

「俺を甘えさせることが出来るのは、いろんな意味でマナだけだよ」



ん?

それは喜んでいいのか?




「そうだね、何て言ったらいいのかな……俺にはね、大切な人がいたんだよ」

「えっ、マジか!?」



ギャルゲーならぬ乙女ゲーの攻略対象者であるコイツに大切な人!!?



大切なって、恋人……だよな?



なんだそれ。

なんてバグだ。



カノンと幸せになれよ!!!

…………そして俺も養ってくれ。




って、あれ?




「いたんだ……って、過去形?」

「そうだね、彼は――彼は俺を、嫌いになってしまったらしい。俺から離れる選択をしてしまったんだ」




びーえるキターーーーー!!!!!




これじゃカノン勝ち目ねぇわ!

……あ、カノンもじーえる希望だったな。




「大切な人ほど俺を置いていく。マナは、マナだけは俺を置いていかないでくれ」

「え、なにそれ俺も大切な人くくりなん?」




脳内でふざけてる場合じゃなかった。




ルミネスおまえ。




数日前に会っただけのヤツに大袈裟だと思ってたけど。

……おまえ、友達いなかったんだな…。




それにしても。

大切な人、か。




そう思える相手がいる、それだけで素晴らしい。



……羨ましいよ。




「なぁ、ルミネス。そいつ、おまえにとっては今も大切な人なんだろ?」

「それは勿論。彼の代わりは誰にも出来ないからね」

「じゃあ諦めんな。そいつにおまえを認めさせて、もう一度傍に居たいって思わせてみろよ」

「もう一度、認めさせる?」

「本当に大切なら、なおさら簡単に手放すな。そんな軽い絆じゃねぇんだろ? おまえとそいつ」




それでもフラれたらカノンを見てくれ!!




とはさすがに言わなかったが。





何か納得したのだろう。


ルミネスがやっと、顔を上げた。






……目が赤くなっていたのは、黙っといてやるか。







武士の情けやで!!!








恋愛脳というより野次馬脳というべきか。


弟を彼氏と想像してしまう主人公であった。

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