ライバルは誰?
治安が良い?
じゃあ何で俺、刺されたんだろ?
時間が経つとともに薄くなっていった傷痕を見ながら、俺は深い深い溜め息を吐いた。
「ん? なんだこれ、ゴミか?」
「ちょっと見せてください」
順調に日々を過ごしていたある日。
カノンの部屋を掃除してたら、テーブルの下からなにやら見慣れぬ紙を発見した。
ゴミはゴミ箱へ!!
そうツッコむ前に、リークに奪われた。
やめろ!
それは俺のだ!!
「これ、学園のプリントですね」
「あ、じゃあ要らね。俺のじゃねぇし」
ちくしょう、ジャイアニズム失敗か。
あ、やめてジト目で見ないで!
ガラスのハートに刺さっちゃう!!
とまぁ、アホなことは置いといて。
「プリント?」
「ええ。どうやら今日中に提出予定のようです」
「え、マズくね!?」
「マズいですね。仕方ありません、ちょっと遣いに行ってきます。グレイスが在宅だと良いのですが」
ハァ、と溜め息を吐くリーク。
……ん?
コイツちょっと疲れてね?
そういえば、俺と違って忙しいもんな。
俺なんてメイドと同じような仕事だし。
って違うぞ!
メイドが忙しくないとかじゃなくて、リークの代わりになる人が居ないってだけだからな!!
俺と違って……あ!
「そうだよ、俺が行けば良いんじゃん!!」
「ダメです」
「はぁ!? 良い案だろ!?」
「たとえ貴方が良いと言っても、実際行くとなると気分は良くないでしょう?」
「ん? どゆこと??」
ラルミネ学園こそが俺の生きる世界だったんだが!?
即答された理由は分からんが、俺だってこんなチャンスは逃したくない。
考えてもみろよ。
ギャルゲー時代、どれだけ通ったことか。
くっ……巷で聞く普通の転生だったなら俺も今頃は通っていただろうに……!
少なくとも一度くらいは学園内を見たい!!!
「やっぱ俺行くわ」
「わ、ちょっ……マナ!!」
リークの手からプリントを奪い取ると、奪い返される前にサッと部屋を出た。
ふふんっ!
チビはすばしっこいんだぜ!!
さーて、グレイスは居っかな~??
「……何事もなければ良いのですが」
嵐のように去っていったマナを遠目に、残されたリークはポツリと一言呟いた。
「いやぁ、急だったのに居たから良かった!」
「先ほども言ったが、マナは本当に良いのか?」
「いーの!」
あれから。
すぐにグレイスを見つけた俺は、車を出してもらうよう声を掛けた。
ら、止められた。
なぜだ。
なんで! どうして!?
みんなして俺が学園に通うのが許せないのか!!?
あ、すみません睨まないで。
マジで通うって言ったわけじゃないですグレイス。
シャレやシャレ!
……とにかく。
リークと同じくグレイスにも一度止められた俺、かなしひ。
でもプリント見せたら仕方なく乗せてくれたぜ、ひゃっふー!!
「家にいたってつまんねーし、てかラルミネ学園好きだしな俺!」
「……それなら、いいんだが」
二人とも何を心配してるやら。
分からんままだが、もうちょいで着くぞ?
それは道が空いていたのか。
信号待ちが少なかったのか。
はたまたスピードが出てたのか。
思いの外早く着いた車が、最後の角を曲がって。
正門が、見えた。
――――ビクッ!!
なんだ?
門が見えたら、心臓が……うるさい?
あれ、なんだコレ?
「着いたぞ、マナ――顔色が悪いな。やはり帰ったほうが良いのではないか?」
「……っ、ジョーダン! ここまで来て帰れねぇだろ!」
こんなん気のせいだ気のせい!!
ガチャッ!
気合いをいれて、乱暴にドアを開ける。
目の前には、門番。
……門番??
あれ、門番って前は居たか?
そもそもギャルゲー時代には居なかったんじゃなかったっけ?
なんで居るようになった?
ズキッ!
腕が――左腕が、痛い?
え、ちょっと待てよ。
ひょっとして心臓が痛かったのって…………怖い、のか?
いやいや嘘だろ!?
治って暫く経つしほとんど痕も残ってないし、そもそも怖くなかったし!!
あ。
誰かが。
掛けよって、来る。
「――――マナ!!」
その"誰か"がナイフに見えて。
俺はグレイスの声を聞きながら、ゆっくりと意識を手離した。




