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閑話・歩み

ディアス視点です



ラルミネ王国物語。



それは主人公が望まない結婚は嫌だと反発し、最上級生となった最後の学園生活の中で恋人を作ろうと頑張る物語である。

ストーリーはどれも同じようなもので、彼女たち候補者にある何らかの悩みが主人公と関わることで解消または良い方向へと進んでいき、その過程でお互いに愛が芽生えていく。


そんなギャルゲーだった。












月が綺麗に輝く時間帯。

こっそりと部屋から顔を覗かせ、周りに誰も居ない事を確認する。安心しホッと一息つくと部屋を出て、音が響かないようにゆっくりと扉を閉めた。

長い廊下も早足で歩けば数分で目的地が見える。近づくにつれドキドキと速く鳴る心臓が耳にまで聞こえそうなほど大きくなったころ、立派な扉の前に到着した。


コンコン


「父上。今お時間よろしいですか?」

「入りなさい」

「失礼します」


すー、はー。

一度だけ深呼吸をし、胃を決して扉を開けた。


バタン。


その音と同時に、中に居た部屋の主が顔を上げる。けれど書類整理をしていたのか、手には鉛筆が握られたままだった。


「まだ仕事をしておられるのですね。おやすみになる頃かと思ったのですが」

「なに、すぐ休むさ。それよりどうした、こんな時間に来るなんて珍しいじゃないか」

「はい。……父上が先日私に話して下さったことについて、話があります」


そう言った瞬間。鉛筆を持っていた男の手がピクリと動き、カランと手から滑り落ちた。


声色と、態度と雰囲気と。


重要な話であると察したのだろう。男は立ち上がり、部屋を訪れた男を中へと招き入れた。


「――それで、それは城を抜け出した事と何か関係があるのかね? ディアスよ」

「うっ!」

「あれだけ言ったのに、お前というヤツは……まぁいい、聞こう」

「あ、ありがとうございます」



今まではこんなに窮屈じゃなかったのに……!

ため息を吐かれてしまった男――ディアスは、思わず頭を抱え込みたくなった。







それは、入園式の前日。

王は珍しく時間を作り、兄弟に話をした。



「ディアス。お前はいずれ国王となり、弟キリアスと共に国を治めることとなるのだ。――ラルミネ学園に通う人々は、皆そう期待している」

「はい、父上」

「重圧は計り知れないだろう。だが逃げることは出来ん。王国は狭いのだ、皆お前を知っている。だがそれはお前を、この国を期待している証拠なのだ」

「……はい。期待に沿えるよう、努力致します」

「うむ。そしてキリアスよ、お前は兄ディアスに寄り添い国をまとめる手助けをするのだぞ」

「はい、父上!」



記憶に新しい、この会話に嘘はない。

ディアスはこの国のために努める、それは変わらない想いだった。




ラルミネ王国第一王子として生まれ育ち15年。多少ヤンチャをしていても、見張りや隔離をされたことなど一度もなかった。それほどラルミネ王国は平和であり、いずれこの平和な国を治める事は二人にとって約束された未来だったのだ。


そんな平和な国に事件が起こったのは、ラルミネ学園の入園式。


園に向かっている途中の車内で、誰かが刃物で切られたという情報が入った。それはほぼ全ての重要人物が集う入園式当日、まさに学園目の前での出来事だった。後の情報で貴族を狙った訳ではないことが分かったが、第一報の時点で危険だと判断されたディアスは城に戻ることになったのだ。


園の様子が気になって部屋を出ようとした瞬間閉じ込められ見張りまでつけられたのは、それから一時間後のことである。


そして次の日。

街の様子が気になり、見張りを振り切り外に出て――ディアスがマナと出逢ったのは、そのときだった。


ディアスにとって、マナの存在自体が新鮮だった。

女性はおしとやかで気難しい、そんな存在だと思っていた価値観が一気に壊された瞬間だった。マナは豪快で面白くて、何より自然だったから。だからディアスも気楽に、自然に接することが出来たのだ。

意図せず帽子が取られたことで警戒し話途中でその場を去ってしまった事は、ディアスの中で悔やまれる話である。

もっとも、その後城にすぐ帰ったため時間があり、マナの情報を集められたのは良かったが。




そして一日中王国全体に何事もなかった事を確認し、見張りも解けたことで外出許可も出た今日。

ディアスは昨日知った情報をもとにマナに会いに行き――――自分の想いが、はっきり分かったのだった。





「父上。私は昨日街で、私を知らない人に出会いました」

「街? ならそれは旅人だったのだろう」

「いえ、フェリシア家伯爵令嬢に仕えている侍女でした。だから気づいたのです。私は、視野が狭いと」

「ほう」

「私は始め、嬉しかった。私を知らない人がこの国にまだいるのだと。――けれど。それは浅はかであると悟りました。私はこの国の象徴になるべき人物にならなければいけないのだと、はっきりと自覚したのです」

「……それで、結局お前はどうしたいのだ」



ジロッと睨む視線が、圧力が押し寄せてくる。

けれど、ここで引いてはいけない。せっかくマナが、自分がこの国のために何をしたいのか気付かせてくれたのだから。




「私は他国に行ってこの国を客観的に見てみたいのです。他国の方々はこの国をどう思っているのか、どうすればこの国をもっと良くしていけるのか。私は――――学園を卒業後、旅に出たいと思っています」



ガチャッ



「……旅に出る?」



ふいに部屋の扉が開く音がして、双方が扉を振り返る。

そこにいたのは、ディアスと同じくこんな遅くにこの部屋に来ることはあまり無い、珍しい人物だった。



「――キリアス。どうしてここに?」

「ノックはしたんですが、どうやらお話中だったようですね。それはそうと兄さん、どういう事ですか?」

「どういうって?」

「旅に出ると言いましたね。まさか、国を捨てるつもりだったとは思いませんでした」

「キリアス、それは違っ…」

「父上、私は今国王補佐について話を聞きに来たのですが、気が変わりました。こんな無責任な男ではなく私が国王となりましょう」




バタン!



話を聞けと言う間もなく、キリアスは部屋を出ていった。

一度言い出したら聞かない、頑固で真っ直ぐなキリアスである。その性格をよく知る二人は、揃って頭を抱え項垂れた。



「……私は、その考えに反対はしない。だがお前の意見を押し通すと、キリアスと完全に仲違いしてしまわないか心配だな」

「出来れば、それは遠慮したいのですが……」



その呟きは、酷く哀愁を帯びていた。










ラルミネ王国物語ギャルゲーバージョンでの嫁第一候補。


第一王女、ティア・エクシード18歳。


妹が勉強しているのを国王になりたいと勘違いし、自分は旅に出たいと言って国王の座は興味ない呈で自由気ままを演じている。


そして、嫁第二候補。


第二王女、キュア・エクシード17歳。


姉が大好きで、旅に出たいという言葉を本気にして姉が自由でいられるよう、自分が国王になればいいと思って勉強している。


そんな、仲の良い二人がすれ違うストーリーである




ハズだった。








ということで、ルミネスはディアス王子でした。


主人公が出ていないときはこういう風に書こうと思っていますが、普段もこんな感じの小説風に書くべきか迷っております笑



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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回もとても面白かったです 続きを楽しみにしています
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