05
ブーーー!!!!
運転手がクラクションを鳴らし響かせる。
お嬢様がドンドンと窓を叩いている。
左腕がジンジンと、熱い。
血が流れている。
「ッテェな!!」
「チッ、おい離せよ!」
「ヤだね、誰が離すか」
見た目が女だから甘く見ていたのか。
コイツは、切られてなお立っている俺が不気味らしい。
俺はというと、男が盗った鞄の持ち手を掴んでいた。
まあ偶然なんだけどな!
攻防をという名の言い争いをしている内に、音に気づいた人が増えてきた。
次々と俺たちの周りに遠巻きに集まって来て、気がつけば小規模な輪が出来ていた。
「ハッ馬鹿め袋のネズミだな!!」
「このアマッ…!」
状況が分かった途端、コイツはもう一度ナイフを振り上げた。
いかん、やられる…!?
「そこまでだ」
え、誰?
いつの間に来たのか、振り上げた腕を掴む人。
鎧を着ている。
腰に剣も装着されてる。
――騎士、だ。
「クソッ、なんてこんなところに騎士がいるんだよ!?」
「ここをどこだと思っている?」
「ヒィッ!」
「この男を連れていけ」
「ハッ!」
「鞄頂きます」
「あ、はい」
ギロリ
190cmはあるだろう大きな身体で、男を一睨みする。
それだけで効果は十分だった。
縮こまる男を見て、騎士は傍に寄ってきた……後輩? に任せていた。
ラルミネ学園は、国中の貴族が集まる名門中の名門である。
それに今年は、ラルミネ王国第一王子も入園する。
謂わばこの学園は、近い未来に国を支えるべき人材が全て集まっている場所だった。
街など一般的な場所には、警察が配属される。
けれどこういう重要な場所は全て、騎士の管轄になっていた。
それにしても。
(この騎士、なんか見たことある気がする)
こんなデカい男なんて、ゲームじゃ見たことなかったのにな。
いやそもそもギャルゲーだから基本、男自体そんなにいなかったわけだが。
ペコリ
騎士が俺に頭を下げ、マントを翻して去っていった。
それを見た周りも、もう終わったんだと思ったのか各々散っていく。
そして俺は。
去る騎士の後ろ姿から、目が離せなかった。
ドンドンドン!
「マナ! いい加減開けなさい!」
「――っ!すみません、ただ今!」
いけね、ぼーっと見すぎてた!
お嬢様に言われ、慌ててドアを開ける。
その一瞬すら待ちきれなかったのか、開いたと同時にお嬢様が俺に抱き……つ、いて…?
……え?
「ちょっ、ちょちょちょいお嬢様!!!??」
「うるさいバカ!っ、心配……したんだから!!」
ひゃっふーお嬢様!!
俺の胸に違う柔らかいのが当たってますよ!!!
女の子同士って、気持ち良いんだな…!
じゃなくて!
「わ、悪かったって!俺が悪かったからお嬢様、そろそろ行かないと式が始まるぞ?」
「マナの治療の方が大事よ」
「腕なら大丈夫だよ。ほら見ろちゃんと動くだろ、神経までいってねー証拠だ」
「……でも…」
お嬢様が納得出来るよう、軽く動かしてみる。
ピリッとする感じはあるが、平気な顔が出来ないほどの痛みじゃない。
けれど、どうやらお嬢様は未だ不安が消えないのか表情は暗いままだった。
じゃじゃ馬とは思えない、しおらしい姿。
め、珍しい…!!
なんだか可愛くて、俺はつい昨日のようにまた頭を撫でた。
あーいいわー。
こんなん絶対顔ゆるむわ。
妹がいたらこんな感じなんだろーなー。
「……マナは、ズルいわ」
「へ? 何が?」
「5年前も、今も。何度も私を庇って怪我をして、それでもヘラヘラ笑ってて」
「ヘラヘラ…」
「男なんて、さっきみたいなクズばっかり」
「ん?」
おや、話が見えないぞ?
それになんだか、空気が……不穏な感じ?
クスッ
俺が不思議がってるのが分かったのか、お嬢様は笑って俺から離れ背筋を伸ばした。
あれ、なんかお嬢様今スッキリした顔してる?
え、お嬢様のスッキリスイッチどこだったん?
……話はまったくもって見えないが、お嬢様が落ち着いたなら良かったぜ。
車から離れ、正門に手を掛けるお嬢様。
その佇まいはまさに、凛とした美しさがあった。
(なんだ、出来るじゃん)
内心驚いていると、お嬢様はパッとこっちを振り返った。
思わず俺も、ビシッと良い姿勢になる。
お嬢様が。
口を、開いた。
「帰ったらすぐに手当てなさい。傷痕なんて残したら承知しないわ」
「っ! はい、分かりました」
「それと、覚えておきなさい」
「?なにを……痛っ」
あ。
まただ。
頭、脳の奥から。
音が、する。
ピッ
ピッ
ピコッ
ピコッ
――――ピ――――
[ アップロード完了
システム全機能再開
イベントクリア
+10ポイント獲得
″カノンからの愛情″ 確認 ]
「私は5年前からずっとマ……女性が、好きなのよ」
――――だから、王子と縁はないわ。
前回がなかなかイヤなタイミングで終わってしまったので、続きを早く書こうと思い頑張りました笑
これにて一旦お嬢様編終了です。
いやまだまだ出ますけど笑
まだ人物が予定の半分も出ていないので、どのくらいの長さになるか分からないです。
なので、気長に読んでくれると嬉しいです。
感想ブクマ評価などなど、あればよろしくお願いします!




