42話 ともあれ共闘です
「あ? なんだよ――」
「黙りなさい」
「なん――」
「黙れ」
ルーリアは男の発言を強引にさえぎった。
「私の不手際があったことは謝るわ、ごめんなさい。時間がないからと募集要項を細かく設定しなかった私の落ち度ね。それに主義主張を持つのは構わないけど、それをここで言うのは、ダメ」
「あ?」
男がすごんでみるが、ルーリアは冷たく蔑むばかりだ。
「先ほどお友達ごっこと言ったかしら。これは利益を求めて大勢が協力し合うから間違ってないわ。参加した以上は私情を挟まず従ってもらう。それが嫌なら最初に抜けなさいと言ったわよね。それで、最初に私情を持ち出したのは誰かしら? そこのおまえだ」
ルーリアは男を指差す。
「あんた、邪魔」
「は? おいおいおいおい何言っちゃってんの? 頭沸いてんのか?」
「わからないのならもう一度言うわ。どっか行ってくれない? ただでさえ時間がないのよ」
ルーリアも怒り心頭といった様子でにらんでいた。
「いやぁびっくりだわ。こんな奴擁護するとか正気かよ。ここまでコケにするってことは戦争も覚悟してんたろうな? 今この場でぶち殺してやろうか?」
男が肩にある紐を引くと、背にある鞘が開きその刀身を抜き放つ。
ルーリアも長杖を取り出す。ほかの結盟員もそれぞれの武器を取り出し構えた。
「チッ、複数で群れないと戦えもしないのか? さぞ気分がいいんだろうなあ? くそが! そもそも化けもんがいたからこんなことになったんだよ!!」
男の大刀がジャラックに向かって振り下ろされる。
(ジャラックさん!)
飛び出したミズキにその凶刃が振るわれた。眼前に迫る刀身がいやにゆっくり見え、胸を切り裂いたのがわかった。
「ミズキ!?」
ジャラックが倒れたミズキを慌てて助け起こす。服は斬られておらず無事な様子に安心し、ゆっくりと立ち上がった。
「これはなんの真似ですか?」
「そいつが勝手に飛び出してきたんだろうが! てめぇも抵抗するなら宣戦布告したも同然になるぜ?」
男の言葉を無視したジャラックが盾と片手剣を取り出す。
「宣戦布告。大いに結構。どこまでもお付き合いしますよ」
ジャラックは話しながらも顕示したカードを操作し、戦争の条件を指定していく。
宣戦布告という文字に触れるとカードに似た光が生成され、それを男へと投げつけた。
「お望みどおり布告しましたが?」
「後悔すんなよカボチャ野郎!」
ジャラックはすでに踏み込んでいた。男の大刀が振るわれたが、盾による最小限のいなしにより床へと突き刺さる。
片手剣が振るわれ、男の腕を様子見と言わんばかりに一閃する。男が横向きに振った一撃も盾によって上方へ弾かれる。
同時に胴体を駆け抜けながら一閃し、ついでにその背中にも一撃を見舞う。黒服が斬られ、その下に着込んでいた部分的な金属鎧も切り裂かれていた。
「ぐっ、てめぇ……!?」
「装備もお粗末なうえ技量も同じですね。加減をしてもこの程度とは……鍛錬されてはいかがです?」
「なんなんだおめえは!? くそっ! お前らも、魔女も俺をばかにしやがって! お前のことは絶対に忘れねえからな、精々背後に気をつけろ!」
男が捨て台詞を吐きながら走っていき、前を見てていなかったために通りかかったフードの男へと衝突した。
その男は青灰色のフードとマントを纏っており、その表情をうかがい知ることはできない。
「くそが! どこ見て歩いてやがる! お前もぶち殺されて――」
一閃。
フードの男が手にした小刀で男を大刀ごと切り裂いていた。
その刃は男、大刀、鎧、それら全てを区別なく、一切の抵抗を許さず滑らかに両断していた。
「なんだこいつは」
興味がなかったのか、フードの男がぞんざいに言い放つ。
「フードにその漆黒の小刀……ま、まさか〈最強〉!?」
馬鹿な、どうしてここに、などといった驚愕の言葉が飛び交う。
しかし、フードの男は騒然とする周りなど気にもとめず、ミズキの元へと歩いていく。
「アラムさん、なんでここに?」
「この前の礼を言いに来た」
「お礼、ですか?」
良くわからず首を傾げる。
「方角を教えてくれただろう」
「ああ!」
「いい素材が手に入った。今はもう手元にないが、ラエマーの奴が嬉しいのか背筋で跳ね回っていた。気持ち悪いから放置してきたが」
「へ、へぇ……」
曖昧に笑って誤魔化そうとしたが顔が引きつってしまっていた。
「宣戦布告がどうとか聞こえたが?」
「それは私が説明するわ」
ルーリアが事の発端と話の流れを説明していった。
「ほう?」
「でもこの服のおかげでボクは大丈夫でしたよ!」
ミズキはアラムに怪我はないと服を広げて見せていた。
「そうか。俺は用事ができたからもう行く」
アラムは去り際に、ジャラックへ向けてカードのような光を投げていた。
「さて、どうしましょうねぇ」
ジャラックがルーリアに尋ねる。
「はぁ、当初の予定とは大分変わってしまったけれど、ジャラックさん、もう一度お願いできるかしら?」
ルーリアは疲れからか声に覇気がなかった。
「ミズキはどうしますか?」
「ボクは構いませんよ」
ルーリア本人があそこまであの男を否定していたため、この大共闘に参加することに否やはなかった。
「ありがとう。では意思確認をしましょうか。参加条件に異議のある人は?」
異議あるものは誰一人居なかった。ジャラックに不満のある者も、参加の機会を捨てようとまでは思わなかったらしい。
「では共闘登録をするわ! 〈共闘〉!」
全員がカードを取り出し、共闘という声が次々と上がる。
「え、えっと、〈共闘〉!」
場に居る者全員のカードが輝き、光がそれら繋ぎ黄色い光が弾けた。




