40話 大共闘です
ミズキは『森の都』にある家、その庭で長柄戦斧を振っていた。ジャラックにどうやって謝ろうかと悩むと共に、謝る機会が考えられず悶々としていた。
早く謝ったほうがいいとは思うが、どのようにしてきっかけを作ればいいのか。
そういった思考がぐるぐる同じところを回るばかりで、解決の糸口は見つからない。
しかし、ミズキの悩みは意味をなさず、きっかけのほうからやって来てしまった。
「おや、今日も精が出ますねぇ」
ジャラックが尋ねてきたのだ。
「ジャラックさん!? ごめんなさい!」
突然の出来事に驚き反射的に謝ってしまう。
「え、駄目でしたか……?」
「いえ……! こ、この前ひどい態度を取ってしまって……」
わたわたと手を振り慌てて否定する。
「ああ、あのときですね。急いでいたのに引き止めてしまってすみませんでした。私は気にしていないですよ。私はてっきり大共闘に参加したくないのかと勘違いしてしまいました」
「……気にしてなかったんですね」
気にしていないのだったら、今までの悩みはなんだったのかとがっくり肩を落とす。
「えっと、大共闘ですか?」
「二人で参加できる大共闘がありましたので、参加したことを伝えにきたのですが良かったですか?」
「大丈夫ですよ! 二人で参加できて嬉しいです!」
懸念が払拭され、先ほどまでの浮かなかった表情が一変、太陽のように輝く笑顔となってミズキはジャラックに飛びついた。
それから日時などを説明され、消耗品や食料を買い足しに街を回っていた。
今回は前のような固焼きパニネではなく普通のパニネだ。それから平焼き菓子も買っていた。
大共闘までの日時には余裕がなく、明日の予定時間に中層の広場へと集合することとなる。
翌日にジャラックが迎えにくると約束したあと、別れたミズキは帰路に着く。
入浴後、下着の上に黒ポンチョを着ると食事を済ませベッドに潜り込んだ。
明日からはまたジャラックと一緒に探索に行ける。そのことが楽しみで寝付けなかったのは仕方がないのかもしれない。
それでも寝息を立て始めたころに、鐘が小さく鳴り響いていた。
*
意気揚々としたミズキがジャラックと共に中層へと来ていた。
木材に覆われた大きな空間に、多くの人がいくつかのグループに分かれてひしめき合っている。
その様相は多種多様だ。ミズキが見たことのあるようなマントを含めた旅装束や、ローブや着物、全身鎧の者すら居た。
重くないのかと疑問に思ったが、考えたら自分も武器を振り回しているのでそんなものかと納得する。
そのなかでも、大刀と呼ばれるものを背負った黒いマントの男がこちらへとやって来る。
そして一人となっていたミズキへと話しかけてきた。
「君かわいいね~」
「え? なんですか急に」
軽薄そうな口調にミズキが顔をしかめた。
「いやいや、かわいいからつい本音がね、ごめんね。あ、もしかして君も参加者なの? 俺と一緒に参加しようぜ?」
「ボクはジャラックさんと一緒に参加するのでお構いなく」
ジャラックのほうを向き説明すれば、ジャラックは亜麻色の髪の人と話しているところだった。
「おいおい、あんな得体の知れない奴なんか放っておいて俺と組もうぜ?」
男の強引でしつこい勧誘に嫌気が差した。
それに、ジャラックに対して得体の知れない奴などと言ったことに、ミズキはあまり良くない感情を募らせる。
男がなお誘おうとしたところで広場の中心から声がした。
「みんな集まってくれてありがとう。今回の大共闘の参加を募集したルーリアと言うわ」
ルーリアと名乗る女性が周りを見渡せば、その長く艶やかな亜麻色の髪がふわりと揺れる。
胸の位置で留められた腰下までの服は特徴的で、ヘソの辺りが大きく開いている。ショートパンツにブーツと活発な印象だ。
花と飾り羽が付けられた帽子を被っていて、その顔はシャープながらも口元に愛嬌があって親しみやすい雰囲気がある。
「募集要項にも書いてあったとおり、新たな迷宮が発見されたわ。赤の月がもうすぐ終わってしまうから急いで募集したというのが今の状況よ
良く通る声でルーリアが説明を続けていく。
「何が居るかもわからないし、ボスが居るのかもわからない。だからこそ大共闘を結成したわ」
大共闘の主催者が凛々しくも優しそうな女性だったことにミズキは安堵していた。
見つめる先ではルーリアが編成について話し始めていた。
「下手に配置を組み替えるよりそのままのほうがいいと判断したから、各々が連携の慣れた人と組んでもらうわ」
急ぎでありじっくり編成を考えている時間がなく、それならば慣れたもの同士で組んでもらったほうがいいという判断だった。
「ただし、各グループに私の結盟員を一人は入れてもらいます。それと注意事項は募集要項にもあったふたつ。ひとつはほかの人との協力関係を乱さないこと。
もうひとつは、最終的な報酬分配は私が判断を下すから、それが受け入れられない人は参加を辞退してもらうわ」
ルーリアの説明に手を挙げる者が居た。
「ひとつ質問」
先ほどの大刀を背負った男だ。




