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175/175

175話 物語の終わり


 町外れの草原の丘を一人の子供が駆けていた。

 ここは新たに創造された空中都市、『天樹の都(ミュトラ・トリース)』。

 中心には天を貫くほどに巨大な樹がそびえ、その周りには丘のように都市が広がっている。

 この巨大な空中都市は活気が溢れると共に、ある意味では神聖視すらされていた。


 事の起こりは三年前、『変転せし六光』が三回ほど巡る前にまでさかのぼる。

 箱庭を覆う爆光と共に、次々と驚くべきことが起こったのだ。

 かつての仲間との、魔女との再会を成した奇跡を人々はこう呼んでいた。


 『求心救世の爆光(エンリヴル)』と。


 以来、『天樹の都』の中心に眠っているとされる、『求心救世の爆光』は多くの者から慕われていた。


 黒猫は駆けていく。


 その後ろには赤髪の少女と魔女が歩いて続き、赤髪の少女は険のある目つきをしつつも穏やかな表情をしている。

 隣を歩く魔女の表情はとても朗らかで華やいでいた。

 その背は少女より頭ひとつ分ほど高い。


 魔女の名はミアティス・アーテイラ。

 黒猫ことアルフェイの主たる魔女だ。

 そして赤髪の少女、ルーナの今の主でもあった。


 世界改変の後、ルーナは自らの主との縁を切り捨てた。

 謝罪のため、魔女アーテイラの下を訪れ、その後も度々訪れるようになった。

 そして糸を結ばないかと言われ、ルーナは承諾することとなる。


 しかし別段何かが変わることもなく、魔女の領域との行き来にアルフェイの手助けが必要なくなったくらいであった。

 そうして今では箱庭の探索を楽しみ、穏やかな日々を共に過ごすまでになっていた。


 黒猫は振り返り、駆け戻ると二人を急かし始めた。

 『天樹の都』ではじきに帰送祭が執り行われる。

 それに遅れたくはないからだ。


 『天樹の都』は人で溢れかえっていた。

 誰もが『求心救世の爆光』の復活と、その帰還を見届けたいがためだった。


 異界への門はすでに開かれている。

 これは多くの魔女たちが協力した結果だった。

 失った人形や、糸が切れてしまった人形との再開を果たした礼として、『陰りし吸魔の暗光(クィハテート)』を通して魂の欠片が提供されたのだ。


 光の柱が立ち昇る。

 関わった多くの親しい者たち、『天樹の都』に集まった者たち、そして、黒猫たちに見届けられながら世界を救った光が帰っていった。

 黒猫は呟いた。

 次はいつ会えるだろうかと。

 風の紡ぎ石を介して声が届けられ、黒猫は陽だまりのような笑顔を浮かべていた。


   *


 墓石が並ぶ庭園の一角。

 墓石の前で手を合わせるミズキの姿があった。

 季節は盆休み。

 ずいぶんな回り道をしたが、ようやく両親の墓参りをすることができたのだ。


 振り返れば長い間戦い続けて来たように思う。

 気づけば知らない世界に招かれ、一心不乱に武器を振るい続けた。

 多くの良き出会いもあり、好ましくない出会いもあった。


 こことは違う不思議な世界。

 心細く、何度も挫けそうになったが、その度に手を差し伸べてくれる人たちが居た。

 支えとなってくれた言葉があった。

 今日はそのことの報告に来たのだ。

 万感の思いを込め祈りを捧げる。


「ただいま、父さん」

「それがミズキちゃんのやりたかったこと?」

「え?」


 振り向いた先に居たのはここに居るはずのない人物、魔女エマヴィス・リティスであった。


「来ちゃった♡」

「え、えええええええええええええ!?」


これにて完結になります。全体的に暗めな展開でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

よろしければ下にあります☆☆☆☆☆から評価、またブックマーク登録をしていただくと今後のモチベーションに繋がります。そして何より単純に嬉しいので是非に。


あとがきは長いので活動報告にあります。

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[良い点] 完結おめでとうございます 再開からは毎日6話、楽しく読ませていただきました [気になる点] 最終章の登場人物が、ちょっと多くて覚えられなかったかも [一言] ミズキと縁を結んだ人たちの日常…
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