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16話 キノコの森


 ミズキが目を覚ましたのは、用意された家のベッドの上だった。天井には丸い照明がるされ、部屋の作りは木の暖かさの感じられるものだ。


 猫ちゃんパジャマの姿で起き上がるがどことなく気分が悪い。まるで良くない夢でも見たかのようだと思ったが、うまく思い出せなかった。


 のろのろとベッドから降りたあと、緩慢な足取りで玄関へと向かった。扉を開ければリティスが寝ているベッドが目に入る。


 しばらく見ていたが起きる気配がないので、家の中へと戻りもう少し眠ることにした。家が大きく揺れたことでミズキは再び目を覚ました。


 家の外に出るとベッドから落下したリティスの姿があった。先ほどの揺れはリティスが落下したものだろう。当の本人は頭を押さえながら起き上がっていた。


「おはようございます?」

「とてもいい目覚めだわ。こんなに気分よく目が覚めたのは久々ね」


 本気でそう思っているのか、リティスは清々しい表情でつぶやいた。それからは修復されたテーブルに着き朝食の巨大マカロンをほお張った。


 しかし、いつ落ちてくるかわからない本にヒヤヒヤしながらだ。リティスはマカロンにかぶりつくミズキを観察し、顔をだらしなく緩ませている。


 それと同時にティーポットから水筒へと紅茶をそそぎ続けてもいた。


 そそぐといってもリティスの持っているティーポットと、ミズキが持ち運べる大きさの水筒とのサイズ差は凄まじく、空中にあふれ出た液体が収束して水筒へと吸い込まれていっていた。


 ミズキが食べ終わるころにリティスは今日の予定をミズキに尋ねた。


「どうしましょう? 武器が直ったらジャラックさんに会いにいくんですけど、まだばとるん一号は直ってないと思いますし……」


 ミズキはその辺に捨て置かれていたカバンを拾うと、中からばとるん一号を取り出す。


 やはりというべきか、修復が進んではいるものの斧部が直り始めたところだった。


「武器が直るまでは暇ということね」

「そうですね」

「なら毒草とか毒キノコとか、毒鉱石でもいいから危なそうなものを探して来てほしいわ……!」


 リティスはその身を震わせ未知の毒物に思いを馳せていた。


「毒物ですか? 実験とかに使うんです?」

「そうよ、いろいろなものを試してみたいわ」

「わかりました」


 ミズキはなんの疑いもなく了承してしまう。リティスは満足そうに頷き、紅茶を入れ終わった水筒を手渡した。


「はい、水筒。これも特別性だからたくさん入るわよ。それとマカロンもたくさん持っていくといいわ」


 リティスが指を振ると大量の巨大マカロンがミズキへ降りそそぎ、その姿が埋もれてしまう。


 マカロンでできたカラフルな山が崩れ、息を切らしたミズキが這い出てきた。


「多いですよ! 埋まっちゃってますよ!」


 抗議するミズキだったが、あえなくリティスに無視されてしまう。仕方なくマカロンの山を降りると、全てをカバンへと詰め込んでいった。


「そういえば魔物とか出てきたらどうするんです?」


 今は武器がなく魔物と遭遇した場合に戦うことができない。


「今は素早くなってるし逃げればいいんじゃない?」

「逃げるが勝ちですね!」

「いざとなったら自壊の腕輪もあるし、ね?」

「追い詰められたら自爆ですね!?」


   *


 ミズキは鏡とポータルを通って外縁部近くの薄暗い森へと来ていた。


 しかし、巨大な光るキノコがそこかしこに自生しているためか、暗さはそれほど感じられない。


 キノコの種類は多く、ときおり胞子をくしゃみの如くき散らしているものもある。ミズキは細長い青く光るキノコの脇を通り、辺りを散策していた。


 毒といえば毒キノコだと思い来てみたが、なんだかすごいところだというのがミズキの感想だった。


「う~ん、どれが毒キノコかわからないよ。あ、鑑定すればわかるかも?」


 目に入った白く平凡なキノコを鑑定する。


〈陽気なる鑑定〉

 『毒玉白茸ヘイグルイラマグス

 【食べるな】


「おぉう……いきなり毒キノコだったよ。とりあえずカバンに入れとこう」


 ミズキは自身の身長ほどもあるキノコを苦労して収穫すると、カバンへと詰め込んでいく。それからはいろいろなキノコを鑑定していった


〈陽気なる鑑定〉

 『眠夜茸(エニスラマグス)

 【食べるな】


〈陽気なる鑑定〉

 『毒蔓茸(ヘイグラーザラマグス)

 【食べるな】


〈陽気なる鑑定〉

 『疑々卵茸(ルニプラティラマグス)

 【たまごみたい】


〈陽気なる鑑定〉

 『猛毒歯茸(スエブラマグス)

 【食べるな】



 ほとんどが毒キノコであった。なかには食べられそうなものもあったがその数は少ない。


 ミズキは鑑定する必要があるのか疑問にも思ったが、名前がわかるのも面白いということもあり、手当たり次第に鑑定しては収穫していった。


 そして作業を続けているうちにわかったことがあった。多くのキノコが独自に発光する光に紛れ、ぼんやりとだが光が見えている。


 その光の色が緑以外は少かったのだ。


(あれ、これってもしかして色でわかるのかな?)


 確認していくとそれらは見事に一致した。赤や青、茶色や黄色に光るキノコには毒がなく、毒のあるキノコは全て緑色の光が見えていた。


(やっぱり緑色の光をまとっているものは毒があるみたい)


 ミズキはそう結論付けた。


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