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114話 最強の魔法剣


 前に来たときと同じ場所に宿泊することにしたミズキたちは、備え付けの露天風呂に四人一緒になって入っていた。


 そしてミズキたちが『摩天楼』を出立してからの出来事を、一九九一にあれやこれやと話していく。


 『大雪原』の探索は思った以上に大変で、クーが大雪崩を起こしたことや、『白玉雪』という変な雪ダルマが居たということを語っていく。


 無事に氷の素材を手に入れることができたが、ほかの探索者と敵対してしまい、どうするか悩んだことも話していった。


「それでいきなり空から大きな氷の柱が降ってきたんですよ!」


 『青炎金剛竜』が乱入してきたのだと。ほかの探索者は一瞬で壊滅し、自分たちも逃げられなくなってしまった。


 やむなく戦うことになったが力の差は絶望的だったと語る。


 それでも三人で力を合わせ戦い続けたが、クーの魔力が尽きてしまいもう駄目だと思ったと。


「そんなあきらめかけたときに一九九一ちゃんの声が聞こえたんです!」

「うん、すごく勇気付けられたんだよ」

「暖かかった」

「え、えへへへ」


 三人に褒められ、頭をでられた一九九一は嬉しそうに笑う。


 それからは態勢を建て直し、ファティマがミズキの武器を修復していった。


 そして、ミズキがクーに魔力を供給したことで魔力不足を解消し、反撃に転じたと熱く語っていく。


 三人で協力して『青炎金剛竜』を倒すことができたと、ミズキが水しぶきを上げながらその喜びを全身で表現していた。


「一九九一ちゃんが居なければ倒せませんでした。四人のうちの誰か一人でも欠けていたら勝てませんでしたよ!」

「ミズキの言う通りみんなの力が合わさりみ合った結果だよ」

「一人では無理」


 ミズキの言葉にファティマとクーが続いた。『青炎金剛竜』討伐までの話を聞いた一九九一は。


「よ、よく勝てましたね……」


 顔を引きつらせながらつぶやいていた。


 そのあとは、風呂を上がった四人が一緒に食事を取り、その際にファティマとクーがペンダントについて話していた。


「これがミズキにもらった魔法剣なんだ」

「これが剣なんですか?」


 ファティマの言葉に一九九一は首を傾げていた。なぜなら十字のペンダントにしか見えなかったからだ。


 そして、ミズキの説明を受け魔法剣を見せようとしたところで、ファティマは固まってしまう。


「あ、これも魔法みたいなものだから不味いよね?」

「ちょっと待ってください」


 そう言うと、一九九一は目を閉じて耳をひくひくと動かす。そして目を開けると。


「今だけ特別ですって。アルマさまも見てみたいとおっしゃっていたと言われました!」

「良かった。じゃあ早速やるね」


 ファティマが首に掛かる十字のペンダントの、その下側をつかむと引きちぎり横に向けた。


「〈魔法刃ルティグイント〉」


 ヴンという音と共に赤紫色・・・に光る刀身が現れる。うろこ状の模様が流麗りゅうれいな剣で、元の青白い色にファティマの赤い魔力が合わさっていた。


 『氷鱗剣』は信じられないほどの切れ味と強度を誇り、ファティマの魔力によって常に修復され続けることで、不滅と言っても過言ではないものになっていた。


 しかし、この場でそれを知るものは居らず、ミズキも色が違うことに首を傾げるだけであった。


「えっと、こうかな」


 刀身が無数の鱗に分離すると、球形の盾を形成しファティマを包み込んだ。


「盾にもなるって聞いたけど……本当に盾になっちゃった。まるであの『青炎金剛竜』がまとっていた氷竜鱗ひょうりゅうりんみたいだ」

「すごいです! 綺麗きれいな色ですね~!」


 ファティマが自らを包み込む氷鱗ひょうりんに感嘆する。その横では、赤紫色の美しい刀身と球形の盾を見た一九九一が驚き興奮していた。


「だから『氷鱗剣』」


 クーはなるほどと納得していた。そしてファティマが〈魔法刃〉を解除すれば光が消失する。


「どうですか!?」

「全然重くないし、これなら振りやすいと思う……」


 ミズキが身を乗り出し尋ねると、ファティマは手に持つ『氷鱗剣』をまじまじと見つめていた。


 そのまま首に掛かる鎖に十字の部分を当てると、くっつき元通りのペンダントとなった。


「なるほど、着脱可能ってこういうことだったんだ」


 ファティマは『氷鱗剣』の機能に感心する。


「本当にミズキには感謝しても仕切れないよ」

「ボクもファティマさんの夢がかないそうで良かったです!」


 二人が話しているとクーがぼそりとつぶやき割り込んだ。


「私ももらった」


 そう言って、青白い綺麗きれいな結晶石の付いたペンダントを強調していた。


「クーさんもですか?」

「そう。ミズキと同じ魔力が湧いてくる」


 そう言って誇らしそうに一九九一へと見せていた。


「すごく暖かい。触ってみる?」

「わぁ! いいんですか?」

「私もちょっと触りたいけどいいかな」

「大丈夫」


 クーと一九九一のやり取りにファティマも加わり、一緒になってペンダントを触っていく。


「本当です、すごく暖かいです……」

「本当だ」

「ミズキの温もり」


 一九九一、ファティマ、クーに次々とそんな感想を言われてしまう。


 ミズキはなんとなく、自分が触られているかのような錯覚を感じてしまい、顔を赤くしてもじもじとしていた。


「とても嬉しい」


 しかし、クーにそんな言葉を微笑みと共に投げかけられれば、細かいことなどどうでもいいかとミズキは思った。


 食事のあと、四人で寝れば夜の時間は過ぎていく。四人とも実に幸せそうな寝顔であった。


 やがて朝日が灯り、ミズキたちは『摩天楼』を出立すると共に解散する。


 そして自らの道を歩み始めた。


 ミズキはリティスとジャラックに報告をしに。

 ファティマはクロードへと会いに。

 そしてクーは男に呼び出されていたが、無視して魔女の領域へと帰っていった。


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