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113話 早速渡しに行きます


「次はこっちね! そのペンダントはわかりやすく言えば単純に暖かいわ! ミズキちゃんの愛の魔力がたっぷりとかよったあったかペンダントよ! 追加機能として永久的にミズキちゃんと同じ魔力を生成し続けるわ!」


 ミズキに手渡したもうひとつのペンダントについて説明する。そんなリティスの叫びの余韻よいんが部屋にこだましていた。


 その勢いにミズキはついていけず、呆然ぼうぜんとするばかりであったが、リティスは気にせず続けている。


「あ、名前は『うろころろん』と『ほかほかミズキちゃん』よ」

「名前ええええええ!? 駄目ですよ! お礼にプレゼントするんですよ!? もっと普通の名前にしてくださいよおおおおおおおお!!」

「えー、いい名前じゃない」


 ミズキは全力で叫び机をだんだん踏みつけ抗議したが、リティスは不服だといわんばかりにぶうたれる。


 自分で使うのならいざ知らず。大切な相手にプレゼントするものの名前がひどいのでは、とてもではないが顔向けすることなどできない。


「良くないですよ! 普通の、普通のにしましょう!?」

「え~……」


 一気にテンションの下がったリティスはやる気の欠片すらなくしてしまう。


「どうせ鑑定されないと名前なんてわからないじゃない」

「駄目ですぅぅぅ!」

「はぁ、ミズキちゃんがそこまで言うのなら……」


 そう言うとミズキの居る机の上にぐでーっと体を倒す。


「じゃあ『魔氷真盾絶断剣』と『魔炎住みし生成炉』でいいでしょ?」

「もう一声……もっとシンプルにしませんか?」

「えー……」


 リティスはますますやる気がなくなってしまったのか、大きくため息をついた。


「大事なものなんですからちゃんと考えてくださいよ!」


 ミズキがリティスの顔をぺちぺち叩いていた。


「わかったわよう。なら『氷鱗剣』と『青宝珠の首飾り』でいいでしょ」

「いいと思います!」


 ミズキが了承するとリティスはペンダントに指を向け、小さな光が発せられた。


「これで名前は変えたわよ」

「ありがとうございます! 早速行ってきますね!」


 よほど嬉しいのか、ミズキが二つのペンダントを握り締め、輝くような笑顔で鏡の中へと走っていく。


 しかし、その途中でバランスを崩したのか転倒してしまっていた。


 その様子をリティスは微笑ましく見守る。そして頬杖を突くリティスは、立ち上がり再び走りだしたミズキを見送り一言呟いた。


「いってらっしゃい」


   *


 『森の都』へと戻り二人の居場所を風の導き石に念じると、二人は同じところに居るようだった。そこは『摩天楼』へ向かうための大通りだ。


 ミズキは駆けだし、ポータルをくぐれば二人の姿が目に入った。


「来た」

「みたいだね」

「ファティマさん、クーさん!」


 クーがミズキを発見し、ファティマはミズキへと手を振っていた。


「無事に魔法剣を作ってもらえましたよ!」

「でも本当にいいの?」

「いいんです! それにもうファティマさん専用ですからね! あ、ちょっとしゃがんでくださいね」


 ファティマはしゃがむもまだ足りないようで、ミズキにもっとしゃがむように言われていた。


 ミズキは魔法箱から十字のペンダントを取り出し、満面の笑顔でファティマの首へと掛ける。


「なんて言ったらいいんだろう……言葉が出てこないや……」


 ファティマはペンダントを握り締め、口元を押さえると涙を流していた。


「ほんとに、ほんとにありがとうね……これで、私も剣士になれるかな……?」

「なれますよ! 最強の魔法剣だってリティス様も言ってましたから! それに、ファティマさんが使ったら面白いことになるって言ってましたよ」

「そうなんだ……感謝しても、仕切れないね……」


 ファティマが嗚咽おえつと共にミズキを抱き締めた。その胸元に揺れるペンダントは想いや願い、そして希望の詰まったものだ。


 ファティマの泣き顔とは対照的に、ミズキの表情は晴れ晴れとしている。やがて解放され、ミズキはクーへと振り向いた。


「クーさんの分もあるんですよ!」

「私の分?」


 クーは首を傾げる。


「これです!」


 ミズキがしゃがむように言う。そして、クーの首に結晶石の付いたペンダントを掛けた瞬間、クーが驚き固まった。


「これは?」

「えっと、リティス様が言うには単純に暖かいそうです。それと……ボクと同じ魔力を作り続けるみたいです……」


 最後のほうは恥ずかしくなってしまったのか、段々と声が小さくなってしまっていた。


「暖かい……」


 クーはペンダントを握ると目を閉じ、その温もりに身をゆだねていた。


「ありがとう」


 クーが微笑み、ミズキも微笑んだ。


「そういえばここに居るってことは?」

「うん、そうだよ」

「一九九一に会いに行く」


 ミズキが尋ねればファティマとクーは答える。


「やっぱり!」


 もう一人の立役者に会いに行くつもりだったのだ。ミズキは未だに涙するファティマの腕を引き、『摩天楼』へと向かう。その後ろにはクーが続いていく。


 『摩天楼』のホールには一九九一の姿があり、落ち着かない様子でうろうろとしていた。


 しかし、心配そうな顔もミズキが太陽のように微笑み、走ってくる姿が見えればたちどころに明るくなる。


 ところがそれも一瞬で、ファティマが泣いていたことでまたおろおろとしだしてしまう。


 そして後ろに続くクーを見れば、氷が溶けたような穏やかな表情だった。そうして一九九一は、どのような結果になったのかを考えあぐねてしまう。


 しかし、全ては杞憂きゆうに終わる。


「一九九一ちゃん!」


 走ってきたミズキが一九九一を抱き締めた。


「無事に素材を手に入れて魔法剣も作ることができました!」

「一九九一のおかげ」

「泣きながらでごめんね……一九九一ちゃんの声、確かに聞こえたよ」


 ミズキとクー、それにファティマがそれぞれの言葉を投げかければ、安心した一九九一はミズキを抱き返していた。


「よ、良かったです……ちゃんと、役に立てたんですね……!」

「はい! いろいろと大変でしたけど、一九九一ちゃんが守ってくれました! 一九九一ちゃんにもお話したいのでまた泊まってもいいですか?」


 ミズキが振り向き二人へと確認する。


「私は、構わないよ」

「問題ない」


 ファティマとクーから了承を得たミズキが嬉しそうに話していく。


「ではまたお願いしますね一九九一ちゃん!」

「はい、精一杯お世話させていただきますね……!」


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