表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/175

101話 目的地までの道のり


 翌日になってから外を確認すると吹雪は収まっていたが、雪はしんしんと降り続けていた。


「吹雪は収まってますね!」


 食事を終えたミズキがテントから顔を出していた。


「調子は?」

「うん、大丈夫だよ」

「そう」


 テントの中ではファティマの疲労を心配したクーが確認をしていた。しかし、問題ないとの返事が返ってくる。


「なら行く」


 吹雪の収まっているうちに進めるだけ進むことにし、手早く出立の準備を整えていった。


 最後にテントを魔法箱に収納すると三人は歩きだす。移動を続け、途中に遭遇した魔物はやはりクーの魔法によって一撃で倒されていた。


 そして、ファティマの疲労もミズキが貸した火守と命守によって抑えられており、行程は順調と言えた。


 それからいくつもの丘を越えると山岳地帯へとたどり着く。


 クーに刺靴と突杖、それにロープを出すように言われ、靴を履き替え両手に突杖を持つと各々をロープで縛っていった。


 その際、クーは泣く泣くミズキを手放していた。そうして凍った斜面を慎重に進んでいると、ミズキが息を切らしながらに愚痴を零していた。


「な、なんでこんな大変なところを……」


 ミズキたちが歩いているところは谷部を避けた斜面だ。


「もっと……歩きやすそうな、下のほうを、進みましょうよ……」


 すでにかなりの時間を歩いているからか、ミズキが息もえにぼやいていた。


「谷は危険」


 谷部には魔物が居ることも多く、交戦を避けたいとクーは説明する。

 それにもうひとつ理由があった。雪崩だ。雪崩を避けるために労力を掛けてでも斜面を進んでいた。


「前に来たとき魔法撃った」


 結盟の者たちと来たときに、炎や爆炎魔法を撃つと大規模な雪崩が起きたとクーは語った。


滅茶苦茶(めちゃくちゃ)怒られた」


 それ以来、谷部は横切るだけにして可能な限り避けているとのことだった。


「楽な谷にする?」

「いえ! こっちでいいです!」


 クーが首を傾げるとミズキはぶんぶん首を振っていた。


「でもかなりつらいですよね……」

「まだ続く。二日くらい」


 片手で膝を突きながらつぶやいたファティマが、掛かる日数をクーに教えられ、その顔を余計に暗くした。


「帰る?」

「そ、素材のためですから! 頑張りましょう!」


 若干期待するようなクーの目に、ミズキはなんとかやる気を出していた。


 それからはひたすら歩き続ける。しかし、ちょうどいいくぼみがあったこともあり、そこでテントを張り野営することにした。


 やがて夜になり、ミズキがテントの中から顔を出し外をのぞいていると、はるか遠くの夜空に青白く輝く光が見えた。


 星より低い位置に見える光は夜空を移動しているようで、軌跡を描きながら飛んでいるようだった。光はやがて見えなくなる。


 そしてミズキがテントの中へと戻ろうとしたとき、クーに引っ張られ、中へと戻されたミズキはクーに抱き締められていた。


 それから夜は明け、ミズキたちは山頂へとやってきていた。そして山を登った先に見えたのは巨大な盆地だ。


「あれが目的地」

「あ、そうなんですね」

「降りればやっと抱ける」


 目の前に広がる盆地を指差したクーにミズキが答え、クーは余程我慢していたのかとにかく早く降りたい様子だった。


「結構掛かったね。『白玉雪』を探すときっていつもこんな感じなの?」

「今回は時間掛かった」


 ファティマが尋ねれば、いつもはもう少しポータルから近い場所に居ると説明される。


 ほかの者たちであったならば無駄足もありえ、探し回ることからもいっそう時間が掛かったことだろう。


 盆地の風が止んだとき、巨大な白くて丸いものが見えた。そしてクーは自身の予想が的中したことがわかり、その口元を小さくり上げる。


「あれ」


 指差す先には半球状の雪の塊が薄っすらと見えていた。


「あれが目的地なんですね! でもなんだろう。雪玉?」

「かまくら」

「え! かまくらだったんですか!?」


 あの巨大なかまくらの中に、今回の目標である『白玉雪』が居るとクーは言う。


 遭遇さえすれば、かまくらの中に居る『白玉雪』とすぐに戦うことができる。そのため人気の迷宮の主でもあった。


 巨大なかまくらが迷宮かと言われれば疑問が残るかもしれないが、何はともあれ、倒せば素材が手に入るのだ。ミズキのやる気は上がってきていた。


「では早く行って倒しましょう!」

「降りてから休憩」


 疲弊ひへいした状態で戦うのは好ましくないとクーに言われてしまう。


「そ、そうですね! 休息は大事です!」


 ミズキが納得している横で、クーはおもむろに灯杖を取り出していた。ミズキとファティマが疑問に思うのもつかの間。


「〈鎖爆〉」


 盆地へと続く斜面を、連なる爆発で次々と吹き飛ばしてしまった。


 そして当然、地響きが起こる。


 揺れがこちらまで伝わるほどの、凄まじい量の雪が谷間に向かって周囲の山から流れ込んでいた。


 大量の雪は谷間で合流し、さらに巨大な雪崩となって怒涛どとうの勢いで谷間を駆け下りていく。ついには盆地へと達すると雪の煙が巻き起こっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし、面白いと思いましたらクリックしてくださると作者が喜びます。一日一回だけ投票できます。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ