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10話 初めての戦いです


 期待するミズキが輝かんばかりのまなざしをリティスへと向けていた。リティスは考えを巡らせたが、特に考えもなく長柄戦斧バトランシェを作ることにする。


 だが、一応理由はあった。周りの魔女に自慢されたときは剣や弓、杖や槍といったものが多く斧系がなかったからだ。


 一部変な剣があったが気にしないことにする。作るものが決まればあとは素材を組成転換をすればいい。鉱石郡が光に包まれ周囲を回り始める。


 性能を上げるには多くの魔力が必要となるが、膨大な魔力を持つリティスには関係がなかった。


 宙に浮く鉱石と水晶はいくつかのグループに分けられ、属性がバラバラだがそれらも無視して作り上げていく。


 次に身を守る防具だが、鈍くさそうなミズキを見る限り鎧系は無理だと判断する。


 多少守りが薄くなっても服のほうがいいだろう。それに可愛いし。という思考の末にリティスは行動する。


「ちょっと服を強化するわよ」


 リティスが指を動かす。するとミズキの着ていた服が光と共になくなり、リティスの手元へと移動していた。


「へ? な、なんで裸にするんですか!?」


 リティスはその叫びを無視して光の輪を制御し続けた。やがて光が収束していくとひとつは両刃の長柄戦斧に。残りの光は白い服へと吸い込まれた。


 完成した長柄戦斧がミズキの近くへと突き刺さる。


「ぎゃああああああ!」

「完成したわよ」


 リティスが指を振ると服がミズキの元へと戻る。


「危ないじゃないですか!? 普通に渡してくださいよ!」

「その長柄戦斧の名前はばとるん一号よ。白服はまもるん一式改といったところかしら」


 ミズキの抗議は無視された。諦めて付近に刺さった長柄戦斧に手を伸ばし。


「ぬ、抜けないぃぃ……!」


 突き刺さったばとるん一号を抜こうと悪戦苦闘するも、その横では説明が続けられていた。


「性能はそれなりにあるはずよ。ばとるん一号とまもるん一式改にも帰属属性を折り込んであるし、破損修復機能も付いているから、多少の刃こぼれや破れならそれほど時間が掛からずに直るはずよ! 流石に全損だと直るのにかなり時間が掛かると思うけれど」

「うわぁ!?」


 ばとるん一号が引き抜ける反動でミズキがひっくり返った。よろよろと立ち上がり長柄戦を掲げる。


「これがボクの武器……」


 構えられたばとるん一号、その長さはミズキの身長の五割増しほどで全金属製だ。暗い紫色をした斧部、その両刃が銀光を反射しており柄は黒い。


「なんだかすごく強くなった気がします!」


 手にした長柄戦斧を見上げるミズキが、武器としての力強さと美しさに目を輝かせた。


「気に入ってくれたようで良かったわ」

「ありがとうございます、リティス様! さっそく試してきますね!」


 言い終わるや否や、けだした。


魔法箱(ファリス)にしまった武器とかは、手をかざすだけで取り出せるようにしてあるわよ」


 ミズキは返事と共に鏡の中へと飛び込んだ。鏡の表面に波紋が広がり、部屋には静けさが訪れる。


「相変わらず騒がしい子ね」


   *


 『森の都』に数多く存在するポータルのひとつ、その前にミズキが仁王におう立ちしている。


「戦いがボクを呼んでいる! いざ、出陣です!」


 勢い良くポータルへと飛び込んだ。光が視界を覆い、晴れた先に見えたものは数多の美しい花々が織り成す空間だった。


 花と生垣でできた巨大な壁が周りを囲み、そのあいだからは空が見え紫光が照らしている。


 草木の巨大迷路をミズキが進んでいくと焦ったような叫び声が聞こえた。


「来て早々こいつと会うなんぞ運が悪すぎるぞ!?」

「悪態つく暇があったら何か考えなさいよ!」

「勝てないし逃げ切れないんじゃない?」


 声は壁の向こうからだ。ミズキは声のもとへけると同時に、背中のカバンからばとるん一号を取り出した。


 角を曲がった先には三人の人影が見え何かと戦っていて、どうやら苦戦しているようだった。


 恐ろしい速度で三人を翻弄ほんろうしているのは、茶色の甲殻獣とでも言えそうな昆虫のような魔物だ。


 頭と思われる部位から鋭くも重たげな針が四本伸びており、四本の足に巨大な鎌が一対ある姿は凶器を彷彿ほうふつとさせる。


 生垣の壁を蹴った魔物が三人に襲いかかっていた。攻撃することへのためらいはあるが、以前に襲われたこともあってその思いを振り払う。


 目の前で人が襲われていることもあり、躊躇ちゅうちょと罪悪感をなんとか押さえて覚悟を決める。


(ごめんね……!)


 助走をつけ跳躍しスカートやケープをはためかせる。大鎌を振り上げた魔物に勢いのまま振り下ろす。


「ううりゃあああああ!」

「なに!?」


 ミズキの一撃は重い音と共に鎌のひとつを切り落とした。運よく関節部に打ち込まれた形だ。

 しかし、相手の反応は早く素早い動きで距離を取られてしまう。


「え、はや!?」


 次の瞬間には肉薄され頭部の針が振り下ろされる。針だと思っていたものは薄刃でミズキの体が服ごと切り裂かれた。


 反撃とばかりに一号を振るが、容易に避けられすでに距離を空けられてしまっている。槍を持った男がミズキにけ寄り、その傷を心配する。


「だ、大丈夫か!?」

「ボクは大丈夫です!」

「来るわよ! 〈火弾(フォナート)〉!」


 女性の杖から放たれた魔法が命中し甲殻獣の動きを阻害する。そこへ槍の一撃が打ち込まれるも外殻に弾き返された。


「チィッ!」

「私の魔法も効いてないよ!」


 二人の後ろに居た男がいしゆみから矢を放つ。命中するも火花が散り弾かれる。甲殻獣が二人を飛び越え矢を放った男に襲いかかった。


 ミズキが走りだすも間に合わず、男はその大鎌で真っ二つとなって光に包まれ消えてしまう。


 甲殻獣が振り向くがミズキはすでに長柄戦斧を振るっていた。迎撃に大鎌が振るわれる。


 交差した瞬間。


 大鎌と長柄戦斧が砕け散った。ミズキは空中へ飛ばされ、相手も大きく仰け反っていた。


 そのとき、茶色の甲殻が開くと銀の針が複数打ち出された。針はミズキの腹部へと突き刺さる。


 一拍遅れてそのことに気がついたミズキは、光に包まれリティスの元へと転送された。


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