占いの先へ
「どうしたんだい、いつになくしょぼくれて」
飛んできた母のぞんざいな言葉も、どこか気遣う気配が漂う。
「あのねぇちゃんの卦を見た」
それだけで、何か重苦しい将来が見えたのだろう。本人には言えないような。
「支天だったかね」
あまり深く思い悩ませたくはなかった。それゆえに少女の前で精一杯に微笑む少年をこちら側へと引き戻したのだから。
「鼎の名も、ね」
それが持つ意味の重さを、占われた少女が知ることはないにせよ、運命というものは巡るのだ。
そっと少年の艶やかな髪をかき混ぜる。さらさらとして手触りの良い髪だが、そろそろ母に頭を撫でられるのを嫌がる時がある。だが、今日は少し甘えたい気分にでもなっているようで、撫でられるままになっていた。
「お前には、お前にしか出来ないことがある。だから、それをお前の全力でやればいいのさ。望みが叶わないことはあるだろうが、それでもやらないで後悔するほうが辛い」
女性にしては低く、耳に馴染むような声は、大地に染み込むように降る、雨のような慈しみがあった。
「母ちゃん……。今日は母ちゃんみたいだなぁ」
「……どういう意味だい」
「いや、だっていつもはもっと男らしいというか……いてっ!」
思わず殴ったのは、まあ仕方ないだろう。余計な一言が引き出した鉄槌である。だが、その鉄槌のお蔭でそれまでのしめやかな気分が少し晴れたことにほっとしたのは、母子の二人ともだったろう。
「父ちゃんって偉大な男だったんだなぁ」
呟いた少年の言葉は耳を素通りした、らしい。