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行く末
「あ~、にぃちゃん、本気ででろでろだね」
呆れたような声と顔が、筮竹を見ている。どういう卦が出たのかは不明だが、占うか何かしていたのだろう。
「そりゃあ、初めての子っていうのは父親にとってみれば嬉しいものらしいからねぇ。ま、男は胎の中で育てる訳でもないから、寧ろ生まれてから子供に『父親にしてもらう』もんだけどね」
ふぅん、と返した声は、そんなものか、という感じがありありと出ている。
「まあ子供っていうのは生まれてみないとなんともしようがない部分が大きいからねぇ」
「……行く末って意味では不安要素がてんこ盛りだけど、まあにぃちゃんは頑張って家族を守るだろうから、あまり気を散らすようなことをいうのは良くねぇよな」
どういう卦が出たのかを、母は問わず、子も語らない。けれど、そこには一抹の信頼のような何かがはっきりとあった。精度が高くとも、占いは所詮占いでしかない。道を切り拓いていくのは、人なのだと母子は理解していた。
「ねぇちゃん、頑張れよ」
ひっそりと少年が呟いた言葉の意味は、誰も知らない。