生まれ出づる悩み
「むー」
眉間に何故か皺を寄せて唸っている少年が居た。
今日は呼び込みもしていないようだ。
「阿蘭」
家族を得てまだ間もない人が、辻占の少年に声を掛けた。
「あ、にぃちゃん。久しぶり! ねぇちゃんとはうまくやってる?」
誰に対する好意なのかが一目で判るような笑顔を向けられ、思わず苦笑する。
「とりあえず、嫌われないように頑張っているよ」
寧ろそれ以上を目指しているのは明白だけれど。
「まあ、でもにぃちゃんなら、普通に接してればねぇちゃんに嫌われることはないだろ」
じーっと見つめる瞳は真剣で、本気でそう思っていることが判る。
「そう思うかい?」
少し自信なさげなのは、まだ花嫁になった女性との交流が順調に深められているか、よく理解出来ていないからだ。
「ねぇちゃんは、割となんでも受け入れてくれる素直さがあるけど、自分を蔑ろにせず、守って大切にして、意見を聴いてくれるにぃちゃんなら、より大事にしてくれると思う」
なるほど、と肯いて、そうあれるように自分を律することを誓う。
「顔が良くて口が上手い男は仁の徳は少ないものだよって、昔のお偉い先生も言ってたじゃんか」
まぁ、にぃちゃんは顔もいいけどな!と言われて、肯定してよいのか否定した方がいいのかちょっと迷ったのは仕方がないかも知れない。
そのころの花婿さんと美少年。
物影から二人を見守り隊←