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イヴ  作者: 甚八
はじまり
3/5

歩く

歩き始めてどれくらい経ったか、2時間か3時間か。

景色は段々と木が目立つようになり、人の付けたであろう道の跡が見え始めた。

どこまで行っても草と木しかないのでは、と疑い始めていた所に人の痕跡を見つけたのは大きかった。

足取りが軽くなるのと同時に新たな不安が過ぎる。

歩きながら私は、覚えている事を整理した。

言葉はわかる、日本という国に住んでいたこともわかる。そこがどんな所だったかも覚えている。

ただ私の事だけがわからない。名前、年齢、両親、家、住んでいた土地。

いくつか風景も思い出すが、それが実際に見たものかテレビや写真で見たものか判然としない。

ともかく、私が覚えている限りでは、ここは日本とは違うのではないか。

2時間も3時間も歩いて、見つかるのは獣道よりは多少見栄えのする程度の未舗装路。山の中なら別にして、私が歩いてきたのは平地だ。こんな所日本にあるだろうか。

日本でないとすれば日本語は通じない。

猛烈な不安。自分が今いる場所も分からず。帰る場所も自分自身も分からない。

広い海の上で1人漂っているような孤独。

胸が痛い程息を吸い込む。1秒止めて一気に吐き出す。

選択肢は1つ。この道を辿る。覚えていないものは仕方がない。不安を感じるのも当然、全て受け入れる。その上でどうしようもない問題は全部先送りにする。

不安や孤独を掻き立てるだけの事は今の私にとって毒だ。何も考えない。この道が何処に繋がっていようと、ここが異郷の地だろうと歩くしかない。

歩くしかないなら歩く事だけを考える。

今はそれが正しいはずだ。

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