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Chain  作者: ルナ
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序章 6話

〜序章〜



6話




 いつまでやるんだろうな?今の俺の気持ちを端的に言うならそれだ。目の前には難しい顔をしている教師に、少し視線をはずせば苛立ちが見え隠れする顔。

別に俺はまったく悪くないと思うのだが、どうやら彼女はそう思っていないようで。


「ちょっと、あんた何やってのよ!!」


何やってるって言われてもな、こっちは指示どうりにやってるんだ。文句があるなら教師に言ってくれ。


「こんなはずはないのですが……」


もっとも、自分の予想外の結果に半ば呆然としながらも作業を繰り返す教師に何を言っても無駄な気がするけどな。

結局、お前らの化けの皮がはがれて終わりってことだ。


「私は嘘は言っていません……」


と言われても、この状況じゃしょうがないでしょうに。そんな泣きそうな顔しないでくれます?俺が悪者みたいに見えるから。んじゃ、俺は帰らせてもらいます。


「どこ行くのよ?」


踵を返した俺を引きとめたのはやはり彼女。近づいてくるのはいいが本当にその剣をどこかにやってくれ。


「あんた、まさか帰るつもり?」

「当たり前だろう?早く帰って他の学校への編入を考えなきゃいけないんでな」


まさか入学の翌日にそんなことを考えなければいけなくなるとは夢にも思わなかったよ。


「今の状況を全部否定するつもり?」


否定も何もないだろう?俺には何も起こらなかった、それが全部嘘であることの証明には十分のはずだ。

それ以上に何か証拠が欲しいなら探偵でも呼んでくれ。こっから先は俺の管轄外だ。


「なら私のはなんなのよ?」


知るか。それからもう一度言うが剣を振り回すな。


「どうしてあんたは人の言うことを信じないわけ!?私がこいつらの仲間なわけないじゃない!!」


実に真剣な瞳、といいたいところだが、あいにく俺はそんな茶番に騙される気は毛頭ない。それも演技の一環だろうしな。

まったくよくやるよ。


「100歩ゆずってこの事態が真実だとしても、俺には何の力もないんだ。だったらここに俺が留まる理由は何もない。お前が真実だと言い張るなら好きにしたらいい。それに俺を巻き込むな」


面倒事は大嫌いだ。冗談じゃない。俺の言葉に何を感じたのかは知らないがうつむく彼女。少し言い過ぎた気もするが、これだけ言っとけば大丈夫だろう。


「だったら……」


俯いたまま言葉を発する。だったらなんだ?


「私も帰るわ」


は?何を言ってんだこいつは。


「だから私も帰るって言ってんのよ!!文句あんの!?」


別に文句はないが、好きにしろともいったし。だけどさっきまであんなに楽しそうだったじゃないか?


「うるさいわね。私は人に疑われるのが大嫌いなの!」


怒気を前面に押し出しているが、その中に不安や悲しみみたいなものがみえるのはなぜだろう。


「疑われるくらいならこんなところにいる必要なんてないの。わかった!?」


思わず頷きそうになるな、すんごい筋の通っていない理屈のくせに迫力がものすごい。大抵の人はこれでびびるぞ。

しかし本当に変わったやつだ。今日はじめて会ったやつの意見なんてそこまで重要なものだろうか?

俺だったら答えは否、聞き入れることすらしないだろう。ここについてきているのが最大の譲歩だからな。


「まぁいいさ、ならとっとと帰ろうぜ」

「わかってるわよ」


部屋から出ようと扉に向かう、はずだったのだが……


「何で?」


これは何の冗談だ?確かに俺達は後ろの扉から入ってきたはずだ。それなのに、


「どうして扉がないのよ!?」


そう、振り返ったその先に扉はなかった。あるのは白い壁、この部屋を囲うそれとまったく同一のもの。


どういうことだ、扉を破壊した?


いや違う。内外どちらから壊したとしても絶対に痕跡が残るはずだ。仮に残さない方法があったとして、それに俺達が気づかないはずがない。


だったら扉に壁紙でも貼ったか?


それなら出来ないこともないだろうが、遠目からならまだしも近くに寄ればあっという間にばれてしまうのがオチだ。


こんなことはありえない。何をどう考えても不可能だ。


「何これ……、意味わかんない……」


軽くふらついているようだ。さっきまでの気丈な態度はすっかりなくなっている。その顔は青ざめてさえいる。

彼女は間違いなく白。これをしたのは彼女ではない。だとすれば、


「………」


考えるまでもない。消去法で答えは簡単にでる。なにしやがったこのクソ教師。


「まだ話は終わっていません。勝手に帰られては困ります」


その顔に、わずかにだが微笑みが浮かんでいたのを俺は一生忘れることはないだろう。

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