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Chain  作者: ルナ
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序章 5話

〜序章〜



5話




 何が起こった?

まだ少し光によってくらんでいる目を必死に働かし状況を確認する。

確かあの教師が彼女の手をナイフをで切りつけた。そしてその瞬間すさまじい光が彼女を中心にして発散された。

これが俺が現在理解している全てだ。少しずつ視界がよくなる。

はっきりと見えたときに目の前に何があるのかは知らないが、少なくともあの教師が敵だということだけは確かだ。

取り出した秘密兵器を強く握りしめ、目をこらす。

次の瞬間目に入ったのは世にも不思議な光景だった。思わず眼科に視力検査に行きたくなるほどにな。


「どうなってやがる」


彼女はさっきの場所に立っている。その様子から無事なのはわかるのだが、


なんだあれは?


まっすぐに伸びた刀身。美しく装飾された柄。彼女が手に持っていたのは間違いなく刀だ。

いや、少し違うな。あれは刀というよりは剣といったほうがいいだろう、装飾なんかが西洋風な気もするし。

もっともそんなものに興味のかけらもない俺としては、あれの正式名称がなんのかはわからん。

そんなことよりだ。何で急に剣なんかが現れたんだ?


「ちょ、ちょっと、何よこれ……」


俺も十分に愕いているのだが、それ以上に驚いているのが彼女だ。

というかそれりゃそうだろう。自分の手を切られて、いきなり光り始めたと思ったら次の瞬間には手に剣が握られているのだ。

これで愕かないのは太古の恐竜くらいだろうよ。大きすぎて神経の伝達が遅かったらしいからな。


「それはあなたの魔力のより生成されたもの。通称、魔具と呼ばれるものです」

「魔具……?」


おいおい、するとなんだ?あれは魔術の一端だとでもいうのかよ。誰か手品だと言ってくれ。

今ならドッキリ大成功ってことで許してやるから。


「少しは信じる気になりましたか?」

「そうね、少しだけなら……」


頼むから雰囲気に流されるのはやめてくれ。


「ならあんたもやってみなさいよ!そうすれば私の気持ちもわかるわよ!!」


それは俺にも手を切れと言っているのか?ごめんだね、血を見るのは好きじゃないんだよ。


「意気地なし」


うるさいよ。唇を突き出して拗ねたような顔をしてもだめだ。というかそういう顔してると可愛いじゃないか、ずっとそうしててくれ。

にしてもだ、ここで新たな可能性が浮上してきた。彼女もこのとんでも展開の仕掛け人なのでは?という疑問だ。

さっきまでは同じ考えの持ち主ということで特に疑いもしなかったが、なぜかあっさり信じ始めている彼女を見ると、そんな考えもあながち間違いじゃないように思える。


「あんた、もしかして私のこと疑ってんじゃないでしょうね?」


するどいやつだ。実はエスパーなんじゃないか?


「その顔、やっぱりそうなのね!!」


ああそうだよ。こうなったらやけだ、大体なそんなもんをほいほい信じられるわけがないだろうが!!そういう非現実的なことは、とおの昔に燃えるごみと一緒にごみ収集車が持っていったよ。


「だからあんたもやりなさいって言ってるのよ!そうすればわかるから!!」


断るといっているのだ。冗談じゃないね。


「この〜!!」


剣を降りあげるなよ、しゃれにならんだろうが!!

そんな風に俺達が言い争いをしている中、もう一人の当事者といえば、そんな様子などどこ吹く風。優雅に紅茶を飲んでやがる。

それどこから出したんだよ。


「心配なさらずとも、選定は血液でなくても出来ます。要は選定を受けるもののDNAが含まれているものならいいのです」

「そういうことは先に言え」


それから俺の咽に突きつけている剣をどけてくれ、死んだらどうする気だ。


「私の手元が狂うはずないでしょう?」


その自信はどこから来る?原稿用紙5枚ほどで説明してくれ。それよりも今の話に突っ込まなくていいのか?他に方法があったのに手を切られたんだぞ?


「別にいいわよ、なんか面白いし!傷もふさがってるしね」


手を見れば確かにふさがっている。何が起こった?あれは間違いなく血だと思ったんだが……。まさか新手の手品!?


「ふざけたこと言ってないで早くしなさい!!」


何様だお前は。


「どうしますか?」


この期におよんでどうするもないだろうが。やってやるよ、どうせ何も起きやしないんだからな。お前らの化けの皮がはがれるだけだ。


「まだ疑ってんの?小さい奴ね〜」


うるさい。俺のほうが身長は高い。


「誰が身長の話をしたのよ!器のことを言ってんのよ!」


冗談に本気で突っ込まないで欲しいものだ。そのたびに手に持っている剣がゆれて危ないったらありゃしない。

俺は彼女から避難するように部屋の中心に向かうことにする。先ほどの机だ。

もっともこの場合、避難になってるかはさだかではないけどな。


ふと教師と視線が合う。なんでニヤニヤしてるんだよ……。その顔を避けた先にあったのは不機嫌そうな顔。

両極端だなおい。普通にしててくれると助かるんだがな。


「血液は嫌なようですから、唾液あたりにしておきましょうか」


そうしてくれ。


「では、この綿棒に唾液をつけてください」


おとなしく言われたとおりにする。なんか病院で検査を受けてるみたいだよ。普通の病院には剣を持ったやつはいないだろうが。


「それでは選定を行います」


好きにしてくれ。教師が魔方陣らしきものに綿棒を近づけるのを見ながら思うのは、今日の夕食のメニューという、なんとも関係のないものだったのはご愛嬌よな。

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