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Chain  作者: ルナ
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序章 11話

〜序章〜



11話



「何をしているのですか!!」


部屋の中に鳴り響く声。その声は凛として鋭く、臨戦態勢だった俺が一瞬でその声の主を探してしまうほど綺麗に俺の耳に入ってきた。


「どうしてあなたはこうも無茶苦茶なことを……。まして生徒と」


部屋の惨状を見てから教師に視線をとばし、珍入者は大きなため息を漏らす。赤みがかった縦ロールの髪を指でいじりながらジト目でもう一度部屋を見回す。


「はぁ……」


そしてまた溜息。なんだかひどく気の毒に思えてならない人だ。


「少しばかりこの子が抵抗するものですから仕方がなかったんですよ校長」


「だからと言って実力行使などもってのほかです!!」


まさに一喝。校長と呼ばれたその人は教師の言葉を一刀のもとに切り捨てた。


校長……、縦ロールのせいか、どこか西洋を思わせる物腰。黒を基調とした、まるでローブのような衣服。しかしその一番の特徴はといえばその顔。


いったいいくつだよ……。


校長というからにはそれなりの年だとは思うのだが、その容姿からはどんなに多く見積もっても20代前半のイメージにしかならない。すばらしき童顔。


「もういいです。ここから先は私が引き受けますのであなたは部屋の片づけでもしていらっしゃい」


「校長がそうおっしゃるなら」


なんだかしらないが勝手に話が進んでいる気がするのだが。どうやら俺の選定とやらを校長が引き受けたというだけで、状況はまるで変わっていない。


「二人とも付いてきなさい。続きは私の部屋ですることにします」


二人という単語で思い出したのだが、そういえばこの部屋にはもう一人いたのだ。部屋を見渡してみると、隅のほうで半ば放心状態でそいつは立っていた。


「そちらの子は大丈夫じゃなさそうですわね」


校長は静かに彼女に歩み寄ると何かを耳元でささやく。すると今まで力のなかった眼に生気が戻ってきたようだ。


「あ、あれ?私何で?あれ?」


「さ、私についてきなさい」


なんだか知らないが彼女は持ち直したらしい。しかもどういうわけかしきりに頭をひねりながらも大人しく校長についていく始末。


洗脳でもしたんじゃないだろうな?


というかその方が理屈として非常にすっきり通るのだが。ともあれ俺までもが黙ってついていく理由はない。現状は、さっきまでなっかた出口が現れた上に最大の敵であった教師はすでにこちらに注意は向けていない。

ここから脱出するには絶好のチャンスというわけだ。


出口に向かって歩く。


何にせよ、この部屋から出なければどうしようもない。とりあえず大人しくついていくふりをして部屋から出たところで逃げればいい。

そう考えた俺の判断は決して間違っていなかったはずだ。というかそれ以外に選択肢はなかった。


とすれば、さらなるこの不思議状況は俺が目の前の協調なる人物を見くびっていたという明確な証拠。


「さ、お二人ともそこにお座りなさい」


部屋を出たその先に待っていたのは老化ではなかった。そこにあったのは最高級ホテルの水^とルーム顔負けの豪華な部屋。

なんというかどこか城の中を思わせる調度品の数々。磨き上げられた床には自分の姿が反射して映るほどだ。


「先ほどはすみませんでしたね。神崎先生はとても優秀なのですが、いかんせん融通がきかないというかなんというか……」


どうやら先ほどの教師は神崎というらしい。正直どうでもいいことだが、さっきのすぐ後だ。その名前はどうやっても忘れられなさそうではある。


「ちょっと!いったいこの状況はどうなってるのよ!!」


さっきまで蚊帳の外だったくせに急に勢いを取り戻し始めたらしい。いまだに剣を手に握り締めたままなのは突っ込むべきなのだろうか。


「落ち着きなさい。ちゃんと説明しますからまずはそこにお座りなさい」


彼女はさらにまくしたてるかと思ったが、何を思ったのか大人しく部屋の中央に据え付けられた応接用らしいソファに腰を下ろす。


「あなたもお座りなさい」


「俺が従うとでも?」


「拒否する理由はないと思いますよ?」


理由なんざいくらでもあるが、なぜだろう?そのどこか優しげな声に言葉をつづけられなかった。どうにもその口調には絶対性というか、そう言った何かを感じる。


「俺は立ったままでいい。説明があるならとっとと言え。俺は早く帰りたいんだ」


「あなたがそれでいいのなら強制はしません。では、」


校長は彼女の向い側の席に座る。俺はソファの後ろにもたれ話を聞くことにする。後ろを取られないようにするためにせめてもの防御。

もっとも、さっきの神崎とかいう教師のようなことをやられたら何の意味もないのだが、それでもやらないよりかはましだ。

もちろんナイフは出したままにしておく。いまだに先が見えない状況で、武器をしまう理由はどこにもない。


「この学校は…」


校長の説明ははじまった。



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