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灯台の下は見えない  作者: 霜月 毬花
7/10

another side 1 T

「城之園……」

真貴乃が心配そうな顔をして李夢と俺を交互に見る。眉間に皺を寄せ、何度も李夢の頭を撫でる真貴乃を俺はただただ見ていた。

「天形は特に身体的に問題は無かったんじゃないのか?」

浩志が李夢から目を話さないまま、ボソリ、と呟いた。握り締めた拳の掌へ爪が食い込んでいく。

「大丈夫、なはずだったんだ」

俺は冨永と浩志に、李夢の記憶の一部が欠落している事を話した。何の記憶が欠落しているかも。

「どうして。忘れているものが何なのかが解っているなら、李夢に言ってあげたらいいじゃん。城之園は李夢の」

「真貴乃」

俺が遮るよりも前に浩志が冨永を止めた。

「これは、天形自身が気付かないと意味が無いだろう」

浩志と俺は気が合うし、考えも似ている。だからこそ、浩志は俺の考えていることが分かるのだ。俺は「ありがとう」と浩志に告げ、李夢の頬を撫でた。乾いた唇を舌で軽く湿らせる。

「俺は待つよ。李夢が思い出す日まで。だから」

少しの間。長く感じる間の中で、ゆっくりと頭を下げていく。

「頼む。協力してくれ」

自分の靴を見続けた。

浩志は息を漏らした笑い方で俺の肩を2回程軽く叩いた。「全く…あんたって奴は…」と呆れる冨永の声は掠れていた。


李夢は体が弱いわけではなかった。逆に普通に比べて健康過ぎるくらいだった。小中高では皆勤賞を毎度取っていた。それは大学に入ってからも同じだった。ただ、本当に運が悪かったのだ。

出展作品制作で忙しく、寝不足が原因で倒れた。倒れどころと打ち場所が悪かったのだ。

自分の異状に実感を持ってないまま日が経つ恐怖に、身を強ばらせる李夢を見て抱き締めることしか出来ない自分が情けなかった。

事実を伝えられたら……でも、そんな解決策なんて望んでない。俺もたぶん李夢も。だから、俺は待つ。李夢が思い出すまで。思い出すまでの辛さを俺も共に抱く。

待ってる。


To be continue...

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