表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灯台の下は見えない  作者: 霜月 毬花
5/10

振り出し

ーーーーー違う。

意識を何処かに持っていかれそうな感覚に陥る。全身の毛穴が開き、嫌な汗が噴き出す。

「だったら……だったら私は何を忘れているの……」

頭を抱えることしかできなかった。


退院してから久しぶりの大学。久しぶりといっても1、2週間ぶり。同じ学科の冨永真貴乃から私が休んでいた間の講義内容のメールが届いていた。入院中の講義は心配ない。あとの問題は、ここ数ヶ月の講義を覚えているかどうかなのだ。

友達の顔はみんな覚えていたし、名前も一致していた。

講義だ。

全て頭にあった。記憶にあったのだ。抜けているものなんてなかった。ここ数ヶ月前に来た教授の顔も名前も覚えていた。

だったら、だったら………!


「李夢」

背後から名前を呼ばれ、我に返る。振り向くと、心配そうに顔をしかめた真貴乃がいた。

「真貴乃……」

「李夢、大丈夫? 凄くボーッとしてたから」

「ごめん、少し考え事。大丈夫だよ」

真貴乃は「そう?」と肩を竦め、「そういえば」と話を続けた。

「今度の六月灯、どうする?」

六月灯? そんな話をした記憶はない。

「覚えてないの? 城之園が言ってたじゃん。城之園と浩志と李夢とうちで今度の六月灯和装する? みたいなこと」

「トーイが?」

「そうそう。で、どうすんの。浴衣着る?」

六月灯。真貴乃もこう言っていることだし、せっかくの祭りだ。楽しもう。

私は真貴乃に頷いた。

「やった! じゃあ、男共をしっかりドキッとさせなきゃね」

真貴乃と嵩月浩志は大学の視覚デザイン学科と彫刻学科の共同個展企画で出会ってからの仲。2人が恋人になるまではそう長い時間は掛からなかった。浩志はトーイと同じ学科で、私と真貴乃が友達であったことをきっかけに、2人も仲良くなった。基本、この4人が大学でのメンバー。

「そうだね」と私が返事をしたと同時に、少しだけチクリと前頭部が痛んだ。


To be continue...

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ