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灯台の下は見えない  作者: 霜月 毬花
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幼馴染、トーイとの再会

 記憶喪失とは言っても、自分自身からしたら全部覚えているのと同じだ。自分のことは覚えている。家族のことも。これまでの生活のことも。自分の何が記憶から抜け落ちているのかが分からないのだ。

「私から何が抜け落ちている?」

 彼にそれを問うたとしても、彼は私に優しく微笑むだけで、私の問いには答えてはくれないのであろう。

 ふと、彼はこう言うのだ。

「忘れるツラさより忘れられたツラさの方が傷が深い」と。

 イルミネーションが綺麗。暗くて寒い外で、眩しいくらいに多いLEDの集合体から私は目を離せずにいた。隣で私の大切な彼が「綺麗だ」と満足気に呟いている。「そうね」と私は返す。これは一生ものの素敵な思い出になる。柄にもなくそんなことを考えながら、私は大切な彼の胸にそっと頭を預けた。

 ―嗚呼。また同じ夢だ。

 私は大切な彼の顔を見ようと首を動かすんだ。彼も私の顔を見ようと首を動かす。彼の顔が見えるはずなのに、私は彼の顔を見ることができないのだ。

「最悪・・・・・・」

 目を開けて直ぐに入ってくる真っ白な天井をぼんやりと瞳に映しながら、寝ぼけた声で呟いた。自分で聞いてびっくりするほどの喉を傷めたようなガラガラの声。

 寝すぎたせいか、体のあちこちが痛い。とりあえず、体を起こして伸びをしたい。

「―え?」

 上体を起こして目に入ってきたのは、自分の想像していなかった景色だった。

 天井も壁も床も真っ白で微かに臭う薬品の臭い。病院だ。

「でも、どうして私・・・・・・」

 前頭部に激しい痛みを感じた。咄嗟に頭に触れた手に違うものを感じた。ガーゼのような感触。包帯だ。目に入ってきた右腕は何本も点滴の管が繋がっていた。

 自分に何かがあったことは把握した。でも、何があった? 今は何時? 何日? 私はいつからこうしているの? 浮かぶ疑問に思考が埋め尽くされそうだ。


 怖い。


「李夢?」

 病室のドアが開くと同時に聞こえてきたのは、聞き覚えのあるような男の声だった。声のする方に目をやると、知らない若い男が立っていた。

「だ、れですか?」

「覚えてない?」

 ―覚えてない?

 私は小さく首を縦に振った。

 彼は一瞬、顔を強張らせたが、直ぐに私に優しく微笑んだ。

「何だよ。俺のこと忘れたのかよ」

 笑っている。けど、泣きそうな顔。私は彼から目を離せなかった。

 彼は私の目の高さまで膝を曲げて、細めた目をもとに戻した。

「城之園灯生。天形李夢と同い年の19歳で同じ大学の・・・幼馴染」

「幼馴染?」

 「そう」と城之園が返事をして、棚の中に入っている衣類やらポーチやらをバッグの中に詰め込んでいく。

 思い出せない。

 顔を顰めていると、城之園が写真を差し出した。小さい頃の写真。私の隣に物凄い笑顔の男の子が立っている。

「それ俺ね。小さい頃からよく遊んでた」

 小さい頃、お気に入りのワンピースで遊園地に行ったんだ。トーイと。

 ・・・・・・あ。

「トーイ?」

 懐かしい彼の呼び名を呼ぶ。トーイは目を丸くした。

「思い出したのか?」

 今にも泣きだしそうな彼に私は大きく首を縦に振った。途端にトーイは私に抱き着いた。

「良かった・・・・・・!」

「久しぶり、トーイ」

「・・・・・・あぁ、久しぶり」

 彼はしばらく私に抱き着いたまま静かに泣いていた。


 To be continue...

 閲覧いただき、ありがとうございました。この作品は自分の疑問などから膨れ上がってできた作品であります。

 自分の夢に向かってコツコツと努力しながら、少しずつでも前へ進んでいきたいと思っています。

 私の大好きな芸人でありパフォーミングアーティストであり劇作家である小林賢太郎さんの言葉にこのような言葉があります。

『0から1は作れなくっても、もがき苦しめば0.1くらいは作れるんですよ。必死になってやれば。それを10繰り返せばいいんです。そうやって作ってます。』

 これからもこの言葉を胸にどんなに小さくてもその一歩は大切なのだと噛みしめながら頑張っていこうと思います。

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