表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と優しくて残酷な世界  作者: オカノヒカル
第十章【日常と嫉妬とシュレーディンガー】
38/63

「トイレでイジメとはずいぶんとベタだねぇ」

□種倉ありすの日常 B5-1



「あんた生意気なのよ!」

 館脇さんの憎悪が心に突き刺さる。けど……いくら考えてもこれといった心当たりがない。

 もしかしたら、自覚のない悪意をこの三人に与えてしまったのかもしれない。

 でも、それならばきちんと抗議としてくれてもよかったのに。

 だって、わたしが一方的に虐めている相手ではなく、どちらかといえば今の段階での力関係は彼女たちが上なのだ。抗議をする側になんの障害もあるはずもない。

 わたしは微かな苛立ちを感じていた。

 だからはっきりさせよう、これ以上険悪な雰囲気になりえないのだから聞きたいことを聞こう。

 そう思った時、急に扉が勢いよく開かれた。

「アリス!」

 ミサちゃんが怖い顔をして入ってくる。さらに、続いて入ってきたナルミちゃんが開いたドアをゆっくりと優雅に閉めている。二人の性格がよく表れていて微笑ましく思えてきた。

「なにやらアリスさんが言いがかりを付けられていると聞きましたので参上致しましたわ」

 二人の登場に、館脇さんたちは驚いて硬直してしまう。

「おいおいおい。トイレでイジメとはずいぶんとベタだねぇ」

「あなたたち、アリスさんに何をしていたのですか?」

 あまりにも簡単に形勢が逆転してしまったので、わたしは拍子抜けしてしまった。二人が入ってきたおかげで、目の前の三人組は怯えたようにミサちゃんやナルミちゃんを見ている。どちらかといえば、勢いよく入ってきた親友達の方が手を出しそうな雰囲気であった。

「お願いミサちゃん、大したことはされてないから、落ち着いてくれない?」

 今にも相手を殴り倒しそうな彼女を宥めようとする。一番被害を受けている人間が一番冷静だというのもおかしな話であった。

「袋叩きにあってるってヨーコに聞いたんだけど」

 いや、それは誇張し過ぎだからと、苦笑いする。

「教室での大騒ぎが原因でしたら、わたくしも謝罪致しますわ。元はといえば、わたくしの好奇心から起こした行動が元凶なのです。本当に申し訳ありませんでした」

 ナルミちゃんが館脇さんたち三人の前へと歩み出ると、穏やかな口調で頭を下げる。

 『やっぱり好奇心なのかよ』とのツッコミをわたしは空気を読んで飲み込む。ナルミちゃんの性格はわかっていたはずなんだけどね。

「いや、それなんだけど、たぶん三池が原因だろ。教室での騒動はきっかけに過ぎないと思うよ」

 ミサちゃんは何か事情を知っていそうな口ぶりだった。

「三池君?」

 三池君といえばクラスメイトの男子で、サッカー部のエースストライカーだ。

 どっかのアイドル並のイケメンな為、一部の女子生徒からは憧れの的であるらしい。


「ネコ耳騒動をきっかけに『憧れの三池君が種倉さんに興味を持ち始めちゃってるぅ』ってんで、彼女たちはそれが気にくわないんじゃない?」

 ミサちゃんが館脇さんの真似をするがあまり似てはいない。けど、これで状況が把握できそうな気がした。

 そういえば、ネコ耳騒動では彼が大声で「かわいい」などと叫んでいたかもしれない。

 館脇さんたち三人は彼に好意を持っていたのだろう。

 そしてわたしがその彼の注目を集めてしまったことが、彼女たちの嫉妬心に火を付けてしまったのだ。

 蓋を開けてみればくだらないこと。

「別にわたしは、三池君の事はなんとも思ってないから……」

 たしかに「格好いい」と思ったことはあるけど……それ以上の感情はまだ持ってはいない。

 でも、納得がいかないだろうか、三人はずっとわたしを睨んでいる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ