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魔法少女と優しくて残酷な世界  作者: オカノヒカル
第九章【非日常とシュレーディンガーとお茶会】
32/63

「ふふふ、今日は狩って狩って狩りまくりましょう!」

□叉鏡ありすの非日常 A5-2

挿絵(By みてみん)



「ありす! 右だ!」

 ラビが指示を出し、わたしがすぐさま反応する。裏路地の狭い空間ではあったが、自身の小柄な体型と的確な指揮のおかげで確実に敵を捕捉する事ができた。

「汝の雷を死に浴びせよ! 『Abracadabra』」

 大気が弾け飛ぶように巨大な閃光が空中を走る。

 それは敵を貫く魔法の槍。貫かれた者はこの世界から消えてゆく。

 そして空間は沈黙した。

「よくやったぞありす。上手くコツを掴んできておるようだな」

 あれから何度か戦闘を経験したわたしは、今日は一度に六体の邪なるモノを相手にすることになった。

 的確に敵を捉え殲滅する姿は、少し前の自分からは想像もできないほどに成長していると思う。もうネコ耳ですら恥ずかしがることはなかった。

「なんかもう慣れたって感じ。ふふふ、今日は狩って狩って狩りまくりましょう!」

 テンションの上がったわたしは駅前の商店街を走り抜ける。

 これだけ気持ちよく敵をやっつけられると爽快だよね。

 ま、経験値が数値化して見れないのが不満だけど。



 あれから三十分近くが経過した。さすがにそれだけの時間、敵に出会わないとわたしの頭も冷えてくる。

 おかげで誤魔化されていた身体の疲れもどっと出てきた。

 喉が渇いたわたしは自動販売機でジュースを買おうと小銭を財布から取り出す。

 が、無意識に右手に持っていたホワイトラビットを落としてしまった。

「うぎゃぎゃぎゃ」

 妙な悲鳴を上げながら転がっていく。そんなラビを追いかけようとしたわたしは、前を見ていなかったのが災いして歩行者の足に衝突してしまう。

「うわっ!」

 派手に転げ回らなかったものの、バランスを崩してそのまま額を地面にぶつけてしまった。はずみでラビを掴む事ができたのは怪我の功名ともいえるだろうか。

「君、大丈夫?」

 顔を上げると、そこにはどこかで見たような男が立っていた。小太りで、そんなに気温も高くないのに額に汗が吹き出していて……。

「へ?」

「怪我はないかい?」

 涙目になりながらわたしは、この間公園で声をかけられた『ダム』という人の事を思い出していた。

 なんでこんなに似ている人間がいるのだろう? と、混乱した頭で考えてふと我に返る。

「……って、本人じゃん!」

 わたしは起きあがると、そのまま反対方向へと逃げ出した。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



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