「ぜひお呼びしたいと思ったのですが」
□種倉ありすの日常 B3-3
それから一週間、キョウちゃんは学校を休んだ。
わたしは何度も何度もお見舞いに行き、その度に謝ったことを覚えてる。
最初は拒んでいたキョウちゃんも、落ち着いてくるとわたしを許してくれた。
でも……結果、彼女と仲を修復する為にわたしはあの子の我が侭を甘受することになる。
何があっても彼女との約束を最優先とすることを誓ってしまったのだ。
けど、いつしかわたしは、そんな彼女との仲に重みを感じてしまう。それまで対等であった友人関係が、主従関係とも思えるほどになってしまった。
原因はわかっていた。わたしが彼女を甘やかし、我が侭を言いたい放題にさせてしまったからだ。
友人と遊んでいるのに楽しくない、そんな状態がわたしの身体にストレスを溜めさせた。
ちょっとした事でイライラして、時にはキョウちゃんと喧嘩になりそうになったこともある。
唯一の安らぎが、授業前の数分や掃除の時間等にナルミちゃんやミサちゃんたちに話しかけてもらえる時だった。
「ねぇ、アリス。今度の日曜日空いてる?」
体育の着替えの時に、ミサちゃんがそう聞いてきた。空いてるとは答えられない。予定はまだないけど、予定は入るかもしれない。なにより親友との約束を最優先にしなければならないのだから……。
「……」
「ありすさん、最近元気がないようですから、ぜひお呼びしたいと思ったのですが」
ナルミちゃんの真っ直ぐな瞳で見つめられると、なぜか後ろめたい気持ちになる。
「どこか遊びに行くの?」
訊いてもしょうがないことはわかっていた。でも、ちょっとした好奇心がわたしの心をくすぐった。
「実はさ、ナルミの誕生日なんだよね」
ミサちゃんが嬉しそうに補足する。
「毎年、お友達を家にお呼び致しておりますの。質素なパーティーですが、アリスさんにも来ていただけたら嬉しいですわ。もちろん、プレゼントなんていりません。わたくしにとっては来訪していただけることが、最良のプレゼントなのですから」
ナルミちゃんのいつもの穏やかな口調にはなんだか癒される。
「誕生日かぁ……」
「無理にとは言わないよ。来られるようだったら来な。それで、楽しもうよ」
クラスメイトの誘いはわたしにとって確かに嬉しかった。
この何日かのモヤモヤした気分が晴れるかもしれない。
あれだけキョウちゃんの我が侭を聞いて毎日付き合っているんだから、一日くらいいいじゃないか。
そんな気持ちがわたしの中に芽生えていた。
キョウちゃんも一緒に呼んではどうか、とナルミちゃんは言ってくれたけど……また同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。
だから一人で行くことを決めた。
「うん。じゃあ、空けとく。楽しみにしてるね」




