【crow】
そして私達2人は、ベンチに座り自殺の用意に取り掛かった。
まず、たくさんの睡眠薬を手の平に出した。
しかし、口に持っていくまでになかなか辿り着かなかった。
「翔君…やっぱり怖い…。」
「俺も…。」
二人の手がガタガタと震えている。
ハァー。
深いため息をつくと同時に、一人の男が立っている事に気付いた。ヤバい…。
直感でこう思ったにもかかわらず、足が動かない。
「君達、何かあったのか?命は無駄にしちゃアカンぞ。」
と言い残し、足早に去っていった。
「香奈ちゃん…どうする??」
「今日は辞めようか。」また死ねなかった。
死にたいと思う気持ちとは裏腹に、なかなか勇気が出ない。
「毎日ココで相談しようよ。」
「ごめんなさい。お金無いから…。」
「じゃあ一儲けするか??」
「えっ??どうやって?」
翔君は自信満々に話した。
「簡単に言うと詐欺かな。」
「詐欺?犯罪じゃない。」
「いいから。俺たちには、お金が必要だ。」
そう言って翔君はケータイを取り出し、どこかのサイトに入った。
【オークション】
だった。
翔君は、自分の持っていたバックをカメラで取り、100円からスタートした。
こんなもので儲かるのだろうか。疑問に思いながらも、その日は帰った。
そして一週間後に、翔君からメールが来た。
「お金が入ったから、あの場所に来て。」
どうやって手に入れたのだろう。
不思議でたまらなかった。
そして、あの場所に向かった。
翔君は、待ってましたと言わんばかりの顔で
「ほらっ。」
っとお金を差し出した。
私の手の中には三百円が入っていた。
「オークションでさ、入札してきた奴、騙して三百円、振込ませたんだ。」
誇らしげに、こう言う翔君が少し怖く見えた。
「これって捕まらないの?大丈夫なの?」
「まあ何とかなるでしょ。」「うん……。」
「俺、どうせだから悪いことしまくって死のうかなぁって思うんだ。どうせ死ぬんだしな。」
「え…でも……。」
「香奈ちゃん。俺たち二人で組まないか?どうせ香奈ちゃんも死ぬんだし。」
「どんな事…するの??」
「銀行強盗…一度してみたかったんだ。あと、でっかい建物を壊してえ。」
翔君は目を輝かせて、こう言った。
この人…本気だ。
そう悟った。
「いいだろ?」
「自殺する話はどうなったの?」
慌てて話を変えた。
「そんなん後でいいよ。なっ。いいだろ?」
また、男の人が立っていた。あの時と同じ服を着て
「くだらない事言ってないで、今を生きーや。」
こう言った。
誰なんだろう…。
また足早に去っていった。
「今の話聞いてたのかな?」
「あのオジサン何が言いたいんだ?気持ち悪いな。とりあえず組織の名前を決めよう。」
どうせ、何もできないと決め付けて冗談で、「crowは?私達が出会った『カラスの集い』から。カラスって意味だよ!」
「よしっ俺も決まったからそれで決まりだ。」




