自殺サイト
『ムカつく』
ずっと言われてたその言葉。
アタシだってアンタがムカつく!!
言いたかったけど言えるわけない。
誰だって存在否定したいもの…。
だってそうでしょ? イジメが起きるのもそんな単純な理由。
「香奈ぁ、まだ学校来てんの?よく来れるねぇ勇気あるー。」
「きゃはは。そうだよねぇ。バカじゃん」
うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。
「何コイツ…顔いっちゃってね?」
「本当だぁ。キモー」
「おい聞いてんのか」
━━ガンッ━━
机を蹴られ、その反動で床に倒れた。
「いて……」
「うわっダッセー」「まぁキモイからほっとこー」
「そうだねキャハハ」
頭悪そうな笑い方…。まぁ言えないけど…。
━━カチッカチッ━━━
友達もいないからケータイいじるしかなかった。サイト見てたら
[カラスの集い]
こんなサイトを見つけた。
【ココは死にたい人が集まる場所です。掲示板へどうぞ】
早速、興味本位で掲示板へ移動した。
【自殺したい人集まれぇ☆★】
【死にたい人集まれ】こんな事ばかり書いてあった。
━━ゴクッ━━━
新しい世界を発見したようで、興奮と恐怖が入り混じっている。
【イジメられてる人集まれ♪♪】遊び半分でスレッドを立てた。
5分ぐらい経って、更新ボタンを押してみると、そこには
「俺もイジメられています。16歳です。」
という書き込みがあった。私は、すぐに、
「初めまして。アタシは友達もいないです。仲良くしてください」
と書き込みをした。
授業を全く聞かずに、そのサイトに釘づけになっている。
━━キーンコーンカーンコーン━━授業が終わり、家に帰ると早速ケータイに噛りついた。
[カラスの集い]
また、掲示板に入った。自分の立てたスレッドに書き込みが増えていた。
「主さん、自殺を考えていますか?」「主さんは、イジメられて、どのくらいですか?」
私は、すぐに返事を書いた。
「イジメられて3年になります。自殺は考えてないですが、生きてる事が辛いです」
友達ができたようで嬉しい反面、少し恐怖を感じた。
更新をし続けて、3回目の事だった。
「一緒に死にませんか?僕は準備できてます…!!」
え…??
信じられない言葉だった。
「まだ考えていません。何で死ぬつもりですか??」
「睡眠薬の大量摂取と考えてます。」
「どこ住みですか?」
「新潟です。」
「あっ!!一緒です!!」「じゃあ丁度いいじゃないですか。今度会ってお話しましょう」
「いいですねぇ。楽しみにしてます」
こんな会話が続いた、ある日の事だった。
「主さん、明日会いませんか?」
え…どうしよう…。
会うと自殺の話ばかりするのかな。
「どうしてですか?ここじゃダメですか?」
「会って直接、計画を立てたいじゃないですか。明日〇〇に3時でお願いします。来るまで待ってますから」
「そんな勝手に…」
それ以来ぷつりと返事が来なくなった。
どうしよう…。
学校でイジメられていても、うわの空だった……。そして約束の3時を過ぎてしまった。
『来るまで待ってる』その言葉が頭から離れなかった。
そして覚悟を決めて、行く事にしたのだった。
電車に乗っていると、だんだん近づいている土地に恐怖を感じた。
電車を降り、約束の場所へ向かった。
そこは人気のない小さな公園だった。
ベンチに高校生ぐらいの人が座っている。
あの人だろうか??
おそるおそる近づくと、それに気付いた男がこっちを見ている。
「あの…。」
勇気を振り絞って話かけた。
「君??サイトの子って…。」
「はい。」
「良かった。来てくれないかと思った。」「いや…そんな事。」
気まずい空気が流れる。すると男が口を開いた。
「本当に死にたいんだ…でも一人じゃ勇気がなくて…。君もそうだろ??」
「いや…まだそんな事分からないです。」
「じゃあ死にたくなったら、いつでもメールしてよ。」
そう言ってアドレスを書いた紙を私に渡した。
「じゃあ帰ります。」
「また会いたいな。」
「はい……いつか会いましょう。」
私は早足でスタスタとその場から逃げるように歩きだした。
心臓がドキドキいってる。あの人本気だ…
恋とは違う心臓の動き。世界が変わった。そんな出来事から一週間。
あの時会った男からの書き込みがあった。
「主さん。メールしてよ。すぐに自殺は考えなくていいから。話相手がほしい。」
話相手ならいいかなと思い、メールしてみる事にした。
「こんにちは。あの時会った、香奈です。メールしてみました」
3分後。すぐに返信してきた。
「香奈ちゃんか。よろしくね!俺は翔です。」
「よろしくお願いします。あのサイトよく行ってるんですか?」
「毎日行ってるよ。香奈ちゃんも??」
「はい。同じ気持ちの人達がいると、心強い気がします!!」
「今は死にたい?」返信に困った。
打とうと思う文も手が震えて打てない。
「思わないです。」
辛うじて打った。
「じゃあ、俺もまだ死ねないな。」
何だかまた怖くなった。返信するのを止めてしまった。
日に日にイジメはエスカレートしてきた。
しまいには先生まで、私の存在否定をしてきた。
「広瀬香奈は、飛ばして……。」
出席もとってもらえないような所まで追い詰められた。
「広瀬だよ。まだいたんだぁ。キモっ。こっち見てるし。」
しまいには違うクラスの子までイジメに参加した。
私は精神的に参ってしまっていた。
「死にたい…死にたい…。」私は手首をカッターで切ってしまった。
いわゆる、リストカット。
頭がおかしくなったのか、翔君にメールをしてしまった。
「死にたい…」
「俺も…一緒に楽になろう。」
「うん…。」
「明日、6時にあの場所へ集合だ。」
「分かった。」
もう覚悟はできている。本番はどうなるか分からないけど。
当日。学校へは行かなかった。
遺書を書くためだ。
死んでから、アイツらに復讐してやるんだ。
【遺書。クラス、先生からイジメを受けていた。辛かった。毎日死にたかった。だからもう楽になりたい。広瀬香奈】
簡単な文だが、私の気持ち。この気持ちはアタシにしか分かんない。
気持ちを落ち着けるため、早くあの場所へ向かった。
ベンチに座っていると、すぐに翔君が来た。
「早いじゃん。覚悟できてんの?」
「うん…だいたい。」
「はい。」
翔君は私にたくさんの睡眠薬を手渡した。
「……。」
いよいよかと思うと、緊張して言葉が出なかった。
「いよいよだな。」
「うん…。」