地球滅亡の救世主
10日前、それは突然に訪れた地球滅亡へのカウントダウンの始まりだった。
人類は荒れ狂い、秩序は乱れた。しかし、ただただ嘆き悲しむだけの人間達ではなかった。優秀な科学者が結束し、わずか9日で作り上げた。それは地球を救うものだった。
そして今日、私は地球を旅立った。「救世主」その名を背負い旅立った。
もうどのくらい経っただろう。振り向けば、地球など存在しなかったように黒い世界が広がるばかり。上や下や、そんな常識ははもう存在しなかった。
代わり映えしない風景、そこまで行けば気が済むのだ。そんなとき、一つの声が現れた。
「あなたは愚かだ。」と、美しい声で言ったのだ。男か女かそんなこと、関係ないほど美しい。そんな声がこの広い、黒い世界の真ん中で、私の耳へと届いたのだった。
「なにがです?」そういったとき、その声は私の脳へと語りかけた。「あなたは迷ったことはありますか?」そして私はこう答えた。「誰だってあるでしょう。そんなこと。」
すると声はまた語り始めた。
「あなた達の存在意義。それは真なる世界にある。真なる世界の住人が、迷ったときに選ばれなかった選択肢、それがあなた達の存在です。」
私は驚愕し、声を出すことさえ出来きず、思考回路は完全に停止した。
「今も常に枝分かれし、その数はまもなく限界に達するでしょう。その世界を一度消去することが私たちの使命なのです。ですから、どうか悪く思わないで下さい。」
そう言い終えると声は消え、光につつまれる。
もう何も、もう何もかも存在しないこの世界。
次消去される日はいったいいつになることか。
初めてのSF作品です。
私は星新一さんのショートショートが大好きなので、挑戦してみました。星さんにはほど遠いですが、お読みいただきありがとうございます。
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