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勇者パーティに三年間所属していた俺、無能だと追放された瞬間に封印が解除されて最強になる 〜勇者を目立たせるため俺だけ能力を制限されていた件〜

作者: 美波

勇者パーティに所属して三年。

俺――レインは、会議の場に立たされていた。


円卓の中央。

全員の視線が、俺に集まっている。


「さて」


勇者が、わざとらしく咳払いをした。


「今日は大事な話がある」


その顔には、妙な余裕があった。


「レイン。お前の処遇についてだ」


ざわ、と空気が揺れる。

俺は何も言わず、続きを待った。


「結論から言う」


勇者は、はっきりと言い切った。


「お前は無能だ」


一瞬、場が静まり返る。


「三年だぞ?三年もいて、剣も振れない、魔法も使えない」


勇者は指を立て、一つずつ数える。


「戦闘は役に立たない」

「指示を出しても動きが遅い」

「存在自体が士気を下げる」


笑い声が、どこからか漏れた。


「正直言ってな」


勇者は俺を見下ろし、薄く笑う。


「使えねぇんだよ、お前は」


一拍置いて、勇者は続けた。


「無能を抱えて戦えば、死ぬのは俺たちだ」


その言葉に、周囲がうなずく。


「だから決めた」


勇者は、まるで裁判官のように宣告した。


「今日限りで、レインをパーティから追放する」


「装備は置いていけ。どうせ使いこなせないだろ」


剣を持つ手が、わずかに震えた。


「お前は優しいからな。ここで文句を言わないことも、最初から分かってる」


勝ち誇った声。


「感謝しろよ。今まで面倒を見てやったんだから」


俺は、ゆっくりと顔を上げた。


「……以上ですか」


「ああ?」


「追放の理由は、“無能だから”。それで全部ですね」


勇者は一瞬だけ言葉に詰まった。


「……あるとすれば」


薄く笑い、吐き捨てる。


「お前がここにいる限り、俺が目立てない」


一瞬、場が凍る。


「勘違いするなよ。俺は勇者だ。お前みたいな一般人とは、格が違う」


俺は、静かにうなずいた。


「……分かりました」


その瞬間だった。


――バキリ。


体の奥で、何かが砕ける音がした。


「……?」


視界が一瞬、白く染まる。

次の瞬間、世界がまるで違って見えた。


空気の流れ。

地脈のうねり。

人の感情の揺らぎ。


そして、頭の中に浮かぶ無数の文字列。


【封印解除】

【全ステータス制限解除】

【スキル使用制限解除】


「……え?」


思わず声が漏れる。


ステータスウィンドウを開くと、そこには見慣れない表示が並んでいた。


筋力:測定不能

魔力:測定不能

耐久:測定不能

敏捷:測定不能


スキル欄は、もはや文字で埋まっている。


【勇者を際立たせるため、同じパーティに属する者の力は制限される】

【※この制限は、本人には通知されません】


そんな一文がログの片隅に表示されていた。


「……何をぼさっとしてる。無能は無能らしく、さっさと消えろ」


勇者の声で、我に返る。


どうやら、俺に起きた異変に誰も気づいていないらしい。


「……失礼しました」


俺は頭を下げ、その場を後にした。


王都を出てしばらく歩いたところで、異変は起きた。


地響き。悲鳴。黒煙。


視線を向ければ、街道の先から魔物の大群が押し寄せてくるのが見えた。


「嫌な予感がする……」


未来視のスキルが、自動的に発動する。

数秒後の光景――勇者パーティが迎撃し、壊滅する未来。


「……助ける義理は、ないか」


そう思ったはずなのに、体は勝手に動いていた。


気づけば、魔物の群れの前に1人で立っていた。


「レイン!?」


背後から勇者の叫び声が聞こえた。


俺は軽く手を上げる。


そして、指を鳴らした。


それだけで、世界が静止した。


次の瞬間、魔物たちは跡形もなく消え去っていた。

血も、断末魔もない。

ただ“存在していなかった”かのように。


静寂。


誰も言葉を発せず、ただ俺を見ていた。


「……な、何をした?」


勇者が、汗だくの顔で聞いてくる。


「見ての通りだ。魔物を消した」


「は? 消した? そんな馬鹿なこと――」


勇者は周囲を見回し、兵や仲間の視線に気づくと、鼻で笑った。


「おい、レイン。調子に乗るなよ。たまたま何かの道具を使っただけだろ?」


ざわ、と空気が揺れる。


「無能なお前に、そんな力があるわけない。あったら、最初から出せたはずだからな!」


その言葉を聞いた瞬間、俺は、淡々と口を開いた。


「出せなかった。正確には――お前たちがいる限り、出せなかった」


「……何?」


「パーティにいる間、俺の力は使えなかった。条件は一つ。“勇者パーティの一員であること”」


勇者の顔色が、死人のように青くなる。


「ま、待て……それじゃ……」


「気づいたか」


俺は勇者を見る。


「お前たちが強かった理由。戦闘が楽だった理由。

致命傷を負っても、なぜか生き残れた理由」


一歩、勇者に近づく。


「嘘だ……そんな……」


勇者の手から、剣が落ちた。


未来視が、勝手に開く。


次の戦闘。勇者は真っ先に逃げ、仲間を盾にする。


俺はその光景を黙って見つめていた。


勇者は、何か言い返そうとして口を開き――

しかし、声にならなかった。


勇者はその場に崩れ落ちる。


俺は背を向けた。


「安心しろ。復讐はしない」


「ただ、お前は――無能を追放した“判断ミスの勇者”として残るだけだ」


俺は振り返らず、その場を去った。

――――

数日後、王都では勇者パーティの解散が発表されたらしい。魔王討伐計画も白紙だとか。


だが、それは俺の知ったことではない。


今、俺は辺境の村で畑を耕している。


「レインさん、これもお願いできます?」


「はい」


力はある。だが、使う必要はない。


静かで、平穏で、誰にも縛られない日々。


土の匂いが、やけに心地よかった。


追放されたあの日が俺の人生で一番の幸運だったのだと、今なら分かる。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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